では、なぜその牛乳は美味しかったのか?質問の角度を変えて、「牛乳の味は何で決まると思いますか?」と改めて尋ねると、「牛の健康状態だな」と返ってきた。「ならば、御社の牛が健康だから美味しいということですか?」と聞くと、「まあ、そうだな」と。
では、どうして他の牛よりも健康なのかを尋ねてみると、放牧メインで育てるのか、それとも牛舎メインで育てるのかの違いがまず明らかになった。
美味しさの秘訣は
「昼寝用の牛舎」にあった
おそらく乳牛と聞いてあなたがイメージするのは、広い牧場で放牧された牛が、のんびり草を食べている光景だと思う。しかし、それをやっているのはごく一部の牧場であって、大半は牛舎につなぎっ放しにして、そこで干し草を与えて育てているのだそうだ。ブロイラーと同じような形で、手間がかからないからだ。
ただ、放牧している牛と比べると、どうしても健康状態は劣って牛乳の味も落ちてしまう。しかしこの牧場は放牧スタイルで牛を飼っているので健康なのだという。
私はなるほどと思った。とはいえ放牧しているところは他にもあるはずで、それだけで独自の美味しさが出るはずがない。それで、他に何か工夫をしている点はないか尋ねてみた。すると、今度は牛舎の使い方に特徴があることがわかった。その牧場では、搾乳用と昼寝用とで牛舎を分けているというのだ。
牛は習性として昼寝をするのだが、その昼寝用の牛舎をわざわざ作っているのは、清潔さを保つためだった。牛舎が不衛生だと、そこから病原菌が広まって牛が感染してしまう。当然、病気にかかってしまうと健康状態が損なわれ、牛乳の味も落ちる。
そこで搾乳用と昼寝用の牛舎を分けて、昼寝用では絶対に糞をさせず、常に清潔さを保つことで健康状態を維持しているということだった。
なぜこの牧場の牛は
足腰が強いのか
「他にそういう工夫をしている牧場はありますか?」と聞いたところ、「いや、ない」ということだったので、これで少し核心に迫ってきた感じがあった。







