さらに調査が続けられてゆく中で、Dの現場付近を移動する体長約150cmの「大型のクマ」が目撃されていたこと、食害されていた量の多さと頭骨欠損など強大な力が加えられたとみられる遺体状況、各現場付近で目撃された加害グマの特徴の食い違いなどから、関係者の間では「主犯は大型の雄グマ1頭であり、他にも殺害・食害に参加した複数のクマ(射殺された雌グマ含)がいる」という説が濃厚になっていった。
ちなみに、射殺された雌グマの胃内容物の3分の2はタケノコであり、確認された人肉量はDが食害された量と一致しないため、専ら1頭で肉食していたとは考えづらかった。おそらく、主犯の雄グマが殺害・食害した後でこの雌グマが現場を訪れ、食害にのみ参加したのだろう。
複数のクマが
食害した理由
主犯と考えられていた「大型の雄グマ」は、9月3日、田代平のデントコーン畑で捕獲檻に入っているところを発見、駆除された。推定4歳で体重は84kg、捕獲時は狂乱状態だったという。
このクマは熊取平で最初の犠牲者を襲撃したのち、捜索ヘリなどの騒音を嫌がり田代平へ移動、Cを襲ったと見られている。さらにCの現場から北西に伸びる笹藪を伝い、第4事故現場の森に現れたのではないか。
なぜなら、三者の遺体の損傷具合から、襲ったのは大型の雄グマと考えるのが妥当だからだ。また、獲物(遺体)を隠すために、枯葉や土をかける行為は、雄グマに見られる特徴でもある。

ただし、「毛は黒くなかった」「遺体のそばで子グマが遊んでいた」「体長150cm、体重120kgほど」などの目撃情報から、Bを襲ったのは「子連れの大型の雌グマ」であるとの見方が強い。

10歳以上の高齢の雌グマは毛の色が赤みを帯びていくのが特徴で、この春に出産したとすると、ひどく消耗していたはずだ。おそらく、第一現場で食害に参加して味をしめ、殺害を犯したのではないかと考えられる。
さらに6月下旬にEを襲った「母子3頭のクマ」の母グマは、また別のクマと考えられており、9月9日に田代平で、2頭の子グマのみ駆除されている。
生き残った母グマと、5月26日に男性を襲った額左側に古傷のあるクマ、そしてBを殺害したとされる「子連れの大型の雌グマ」は、その後駆除されたという情報がない。過去に殺害や食害経験のあるクマは再び人を襲う可能性が高く、まだ生きているとすれば危険な状態であるといえるだろう。