遺体が発見された同日午前中には、現場付近で同じくタケノコ採りに入った60代の夫婦もクマに襲われている。夫がゲンコツでクマの頭を叩くと逃げて行ったとのことで、幸い女性が腹部に軽いかすり傷を負っただけで済んでいる。
4日間で2人が死亡
ある人はクマと闘い生還
悲劇は続く。5月22日午前5時頃、秋田市在住のB(78歳)と妻F(年齢不明)は、タケノコを採るため、熊取平近くの笹藪にクマ除けの笛を吹きながら入っていった。午前7時30分頃、「クマだ!逃げろ!」と棒でクマを牽制しながら叫ぶBの声を聞き、近くにいた妻Fは慌てて逃げたのち警察に通報。
警察到着前に妻Fが車で現場に戻ったところ、Bの姿はすでになかった。同日午後1時20分頃にBの遺体が発見された。無惨にも脇腹はえぐられ、頭部には大きな引っ掻き傷が残されていた。
発見されたのは、第一犠牲者であるAの現場から北に約500m離れた牧草地だった。おそらく初撃を笹藪の中で受けたあと、車を停めた林道方向に100mほど南下したが力尽きてしまったと思われる。
2件の死亡事故を受け、東北森林管理局は現場周辺の林道を約6kmにわたり通行止めにするなどの対策をとったが、残念なことに25日に3人目の犠牲者が出る。
青森県十和田市に住むC(65歳)は、25日早朝から田代平へタケノコ採りに出かけていた。やはり夜になっても帰らなかったため、親族が警察に通報し、翌26日午後7時頃から捜索が開始された。3日間捜索したものの見つからなかったため、Cの弟はタケノコの買取業者ら18人で捜索隊を組み、29日朝から入山した。
入山してすぐの午前8時45分頃、青森県新郷村在住の女性G(78歳)が「息子がクマと闘っているので助けて欲しい」と沢から上がってきた。この女性Gは背後からクマに襲われ、尻を噛まれて軽症を負っていた。
一行は、急斜面なので助けに行くことができず、代わりに大声を張り上げたり草刈機のエンジンをふかすなどしていると、「このやろう、やるかー、ばかやろー」と沢の下から息子と思わしき叫び声が聞こえてきた。
息子H(年齢不明)はナガサと呼ばれる剣型のナタで、クマと30分近く闘ったのち撃退。この息子による「下に誰かのヘルメットとザックがある」との証言が、Cの遺体を発見する一助となった。