演じる役のバックボーンの詳細がわからない時、どう演じるか
錦織は、今後、ヘブンとトキの人生に大きな影響を与える役割を担う。すでに高石あかりさんとトミー・バストウさんとの掛け合いがテンポよく行われている。
「高石さんとトミーさんと3人のシーンがかなり多いです。第5週以降は特に多くて。目の前で起きている事象はちょっと重めの話ですが、それを重く扱わず、あえてコメディタッチに見せ、笑いの絶えない面白いシーンが多い。
そのなかで高石さんもトミーさんもお芝居のテンポ感やテンション感がとてもナチュラルなんです。コメディではあるものの、オーバーに演じない。一緒に演じていて、それが心地よくて。素敵なお二人だなぁと思いながらお芝居させてもらっています」
気になるのは、第5週で、遊郭が苦手で中にひとりで入れない錦織。そこにはどんな事情があるのだろうか。
「これはネタバレになりますので、いまは話せません。
登場人物それぞれが何かしらの事情を抱えていて、錦織にもそれがあるのですが、いま言えるのは、『大盤石』と言われているぐらい、松江ではトップクラスの秀才で、そういうふうに周りから思われているというプレッシャーや、彼には彼なりの挫折みたいなこともあったりするわけです。それらとどう向き合うか、ゆくゆく描かれると思います」
錦織のバックボーンはうっすらと聞いてはいるものの、まだ具体的には台本に書かれていない。先々出てくるかもしれない部分を予想しながら演じるときは俳優としてどう対応するのだろうか。
「ある程度の骨組みのようなものはわかりながらも、台本に書かれない限りは詳細がわからないということは、これまでも経験しています。
台本をもらったとき、知らなかったことが書いてあるワクワク感のようなものは、ある意味、視聴者目線に近い感覚で。それはそれで楽しいと思いながらやっています」
与えられた役の過去も未来も漠然としていることもある。「しかも、最初に説明された裏設定などが、最後まで出てこないこともあるんです」と言う。
そうなると、瞬間、瞬間の表情の鮮度が勝負だろう。
先述したように『ばけばけ』では、ユーモラスな部分を真剣に演じているし、時折見せるシリアスな表情も印象的だ。とりわけ『国宝』でも何度か見せた、かすかに喉が動き、ゴクリと息を飲んでいるのがよくわかる瞬間。その芝居について聞いてみたかった。
「あんまり意識的にはやってはいないのですが、そう言われたらやっているかもしれません。その場の空気と皆さんの芝居で自然とそうさせてもらっているのでしょうね」







