住みたくても買えない都心マンション
「ハッピーセット」転売騒動との“共通点”
かつてマンションを買うというのは、「家族が住む場所を探す」ことだった。モデルルームに家族で出向き、ローン計画を練りながら未来の生活を描く――それが常識だった。
ところが今では、都心の高級マンションはグローバルな金融商品になっている。1戸単位ではなく、「5億円台の部屋を数戸まとめて現金で購入する中国系投資家」や、フロアごと・棟ごとに購入する投資家も存在するという。
これは不動産会社側にとってもありがたい話だ。モデルルームで何度も対応し、何度も話し合いし、ローンの世話までする顧客よりも、中国人客であっても、複数戸をおまかせでまとめ買いしてくれるほうがありがたいだろう。
問題は、こうした取引の多くが日本国内の金融審査を経ていない点にある。送金元が海外の場合、購入資金の出所や税務上の確認が不十分なまま、現金決済で完了することも珍しくない。
現在の中国は海外に持ち出す資金が厳しく規制されているが、いったいどうやって投資資金を調達しているのだろうか。一部メディアが指摘している「地下銀行」が利用されているのかどうか。
いずれにせよ、いったん所有してしまえば、住む必要も貸す必要もない。たとえ空き家のまま管理費を払い続けても、転売して1割値上がりしていれば、数千万円の差益が得られる。こうして中国から投資資金が流入し、都心の地価を押し上げ、一般市民の手の届かない価格帯となってしまった。
さらに問題なのは、こうした投資が「実需を伴わない価格」にまで押し上げて、バブル状態を作り出している点だ。都心のマンション所有者は多くの含み益を抱えているだろうが、それがいつまで続くかはわからない。
それでもかつてのように「賃貸に回したら何%の利回りが出る」という考え方であれば、まだ健全であるが、現在主流となっている投資方法は転売主体なので、利回りとは無関係に価格が上がっている。
これは分譲マンションの「メルカリ現象」とも言える状況だ。以前、マクドナルドがハッピーセットにポケモンカードをつけるというキャンペーンをやったときに、転売ヤーが殺到して食べ物を捨て、カードだけを持って帰ってメルカリなどで高額転売したことが問題になった。
マクドナルド側も購入制限をするなど対策を立てていたが、何度も並び直すなどして転売ヤーが買い占めてしまい、多くの子どもたちが入手できなくなった。
これと共通していることが都心マンションで起こっているのである。