無人の部屋写真はイメージです Photo:PIXTA

東京の中心部で進む
「見えない住人」の増加

 夜の東京都心を歩くと、超高層マンションの窓に明かりが点いていない部屋が目立つ。多くはまだ住人が帰宅していないからだろうが、現在は、「人が住んでいない部屋」も少なからずあるようだ。

 たとえ完売したマンションであっても、空室は一定数存在する。たとえば、「賃貸に回しているが、まだ借り手が決まっていない」「地方の経営者が東京出張用に購入しているため、実際に在室している日が決まっていない」などの理由である。

 千代田区や港区でも、そういった空室率は1割を超えると推定されている。ただし、最近は完売した新築マンションで、入居率が5割を切るという異常なケースが増えている。

 私は千代田区議会議員として、日々区民から多くの相談や苦情を受ける立場にある。

 最近、これまでになかったような相談が舞い込んだ。それは「誰が住んでいるのかわからないマンション」や「外国人投資家とのトラブル」に関する訴えである。相談を受けているうちに、これは単なるマナーや騒音の問題ではなく、都市の構造そのものを変えてしまう深刻な兆候であることに気づいた。

 新築マンションに「見えない住民」が増え、それが行政の制度や地域の支え合いの前提を崩す可能性があることがわかってきた。

 東京の中心部で着実に進行している「見えない住人」の増加は、購入されたのに居住実態がないマンションが増えていることを意味している。

 現在、千代田区の新築分譲マンションは数億円が当たり前になっている。それほどの高い買い物をしておきながら、自分で住むこともせず、賃貸に回すこともしない。都心で一体何が起こっているのだろうか。