誰もが同じように見えるかもしれません。似たようなかっこうをし、似たようなことを学び、似たような生き方をしている。
でも、それは単純に比較しているからにすぎません。本来人間はそんなに単純に比較できるものではない。シュティルナーはそう言いたいのです。
だから他者とは比較することのできない本当の自分を見つける必要があるのです。そうでないと、自分の望む選択ができないまま人生を終えることになりかねません。
「女性だからこうしなさい」とか、「あなたは●●なタイプだからこの仕事が向いている」といったステレオタイプな生き方を押し付けられてしまいかねないのです。
真に自由に、自分らしい選択を重ねていくためには、自己の本質を自覚し、「唯一者」としての自分を発見することが大事です。
ほどよくあきらめることが
いい選択につながる
では、唯一者としての自分を発見するにはどうすればいいのか。
シュティルナーはその手がかりとして、「自分の所有物を確認すること」をすすめています。
家、車、本、服、スマホといった物理的な所有物はもちろん、どこに所属しているか、好きなものは何か、など、自分に関するあらゆるものを確認することで、自分が何者であるかがわかってくるというのが、シュティルナーの考えです。
たとえば、子どものころに何が好きだったかを思い出すと、自分が本当にやりたいこと、自分が本当に欲しいものがわかることがあります。
それは、自分の心の声を聞き、世界を自分中心にとらえ直す試みであるともいえるでしょう。
なお、唯一者である自分を大切にするシュティルナーの考えは、極端な個人主義と受け取られがちですが、その本質は決して利己的なものではありません。
あまりにも他者の期待や価値観に振り回され、自身の本心を見失いがちな私たちに、自分を見つめ直すよう促しているのです。
人間は欲望の塊であり、つい必要ではないものさえ求めてしまいます。そして、それが私たちを、いい選択から遠ざける一因にもなっています。







