どうする成長や社会保障支える労働力の確保
「外国人労働力」についての合意形成必要
現在の日本はいくつかの困難な問題に直面しているが、最も根本的なものとして、人口構造の変化がある。生産年齢人口(15~64歳人口)が減少を続けているのだ。重要なのは、この年齢階層の人々が、生産活動の担い手として経済と社会保障を支えていることだ。
このため、経済のさまざまな分野で、労働力不足が深刻化する。特に介護分野では、すでに有効求人倍率が著しく高い値になっており、介護サービスを継続できるかどうかさえ確実でない状態に陥っている。
こうした状況では経済は成長できない。
これに対処するため、高齢者や女性の労働力率を高めるとともに、海外からの労働力を増加させることが必要だ。
高齢者と女性の労働力率を高めることは、合意が得られていると考えてよいだろう。そして、これを実現するために、すでにさまざまな施策が行われている。
政治的な立場によって意見が分かれるのは、海外からの労働者に、どの程度、どのような形で依存するかだ。
これについては、最近の外国人に対する反感の強まりとの関係を考える必要がある。ただし客観的に見て、外国人労働力に依存しない限り、日本経済は成り立たない形にすでになっていることも事実だ。したがって、いかにして無用の摩擦を防ぎながら、外国人労働者を増やすことができるかを考える必要がある。
自民と維新の連立合意文書では、外国人政策の司令塔として担当大臣を置くことや外国資本の土地取得規制強化が盛り込まれただけで、外国人労働力を日本の成長や労働力不足の問題への対応としてどのように位置付け、活用するかという問題意識は欠いたままだ。
日本が抱える問題は、もちろんこれだけではない。人口の高齢化に伴う社会保障費の増大をどう考えるか? それによって財政の負担がどの程度にまで増加するか? 防衛費の負担をどこまで、どのような手段によって引き上げる必要があるのか? など、問題は山積だ。
だが、自民と維新の政策協議でも、また野党間でも深い議論は全くなかった。
経済成長には生産性向上による
実質賃金引き上げこそが根幹
持続的な経済成長にとって必要なのは、労働生産性を高めることだ。このためには、資本装備率(労働者1人当たりの資本ストック)を高める必要がある。また新しい技術やビジネスモデルの導入によって、生産性を高めることも重要だ。さらに、人材再教育やジョブ型雇用への改革などが求められる。
こうしたことが実現されれば、実質賃金が上昇する。それによって日本人の暮らしが豊かになる。これが望ましい長期的経済成長の姿だ。
ところが、現実の日本を見ると、本コラム『ガソリン暫定税率廃止で「実質賃金」はまた下がる!?長期低落を食い止める王道は競争力回復』(2025年10月9日付)で指摘したように、実質賃金は長期的に低下傾向を続けており、いまに至るまでこの傾向から脱却できない。
これは、生産性向上による実質賃金の上昇のメカニズムが働いていないからだ。