誰もが心動かされるチャーミングな造形
BEVのメリットで静かでスムーズ、安定性も高水準

 日本向けのID.Buzzは、2-2-2の6人乗りのNWB(ノーマルホイールベース2990mm/全長4715mm)と、同2-3-2の7人乗りで全長とホイールベースが250mm延長されるLWB(ロングホイールベース)の2種。価格差は約100万円。最高出力は両車286psで、バッテリー総電力量はNWBが84kWh、LWBが91kWh、一充電走行距離はそれぞれ524kmと554kmと十分だ。

 ID.Buzzの前に“タイプ2”を簡単に説明しておこう。タイプ2は、VWの原点となる“タイプ1”(通称ビートル)に続いて1950年から量産がスタートした。実用車ながら、そのチャーミングなスタイルがとくに北米で愛され、しだいに自由、平和、独立心といった、それまでの自動車にはなかった新しい文化と価値観を創造した。世界中で信奉者を生み出した名車だ。

 そんな“ワーゲンバス”を最新の電動化技術を投入して蘇らせたのがID. Buzzである。ID.Buzzは、先行導入されたフル電動SUVのID.4に続くID.ファミリー第2弾として、VWのeモビリティ戦略を推進するという重要な使命が与えられている。さらに未来に向かうVWのブランドアイコンとしての役割も期待されている。

 このデザインさえあればBEVでなくても十分に商品として通用するのではという気もするが、それだと存在意義が激減してしまうことになるわけだ。

“ID. Buzz”の容姿はあまりに魅力的。このクルマを目にして何も感じない人などいないだろう。特大のVWロゴとV字型パネルを備えたフロントフェイス、カジュアルなカラーコーディネートは、“タイプ2”をよく知らない人にとっても魅力的に見えるに違いない。それは小さな子どもたちも同じ。街を走ると笑顔で手を振ってくれる。こんなクルマは滅多にない。

 動力源を電気に割り切ったことは、ID.Buzzをいろいろな点で特徴づけている。車内は広々としているが、フロアにはビッシリとバッテリーが積まれているので、日本車のミニバンのように低床ではない。だがそれが独自性と、往年モデルと同様の独自の“道具感”を演出する要素になっている。