対象は現地の小学生1500名。このうち750名をシンクシンクを使用するグループ、750名を従来通りの学習を続けるグループに分けて、算数の点数やIQの変化を比較するという、ランダム化比較実験と呼ばれる手法の実験です。算数の成績測定にはTIMSS(国際数学・理科教育動向調査)、IQ測定には田中B式IQテストを使用し、3カ月間の前後で比較しました。
実験結果は私たちの予想を上回るものでした。
3カ月後の結果測定では、シンクシンクを使った子どもたちは、使わなかった子どもたちと比べて、算数の成績で偏差値換算6.8ポイント、IQスコアで7.0ポイントも向上したのです。
また、シンクシンクを使った子どもたちの非認知能力(学習意欲と自尊心)も優位に向上したことがわかりました。
この「シンクシンク」を用いた実証実験については、中室教授の『教育経済学の最前線 科学的根拠で子育て』(ダイヤモンド社)で取り上げていただいています。
特筆したいのは、シンクシンクで学んだ内容と算数のテスト内容が異なっていたことです。
『自分の頭で考える子に育つ学ぶ力の伸ばし方』(川島 慶 ディスカヴァー・トゥエンティワン)
シンクシンクは、知識を教えるものではなく、計算の練習をするアプリでもありません。図形や論理、数の問題などを通して思考力を楽しみながら育むアプリです。
それなのに、算数のテストの点数が上がり、IQが向上したのです。
また、この実証実験でもう一つ重要だったのは、効果が特定の子どもたちに限定されなかったことです。
性別、学年、保護者の学歴――これらのどの属性で分析しても、シンクシンクの効果は一貫して見られました。
こうした経験から、私は「考える楽しさ」は万国共通であり、どんな子どもでも、「学ぶことが楽しい」「考えることが楽しい」と思える適切な環境が整えば、その力を発揮できるのではないかと考えたのです。







