医療・年金・介護の仕組みは適切か
人口増加の前提が狂い始めている

 日本は、医療では「国民皆保険」、年金では賦課方式による公的年金を柱に、社会保障制度を運営してきた。全ての国民は、職業などに応じて医療保険制度に加入する義務を負う。

 窓口で払う医療費は原則3割で、残りの7割は保険がカバーする。所得水準にもよるが、70歳~74歳は2割、75歳以上は1割の負担で済む。なお、子どもは地方自治体による補助が出て、自己負担がゼロの地域もある。

 公的年金は、現役世代が納付する保険料で、その都度必要な年金を給付する。これを賦課方式という。イメージは、現役世代から年金受給世代への「仕送り」に近い。

 企業に勤めている人が加入する「確定拠出年金」は、自分あるいは企業が拠出した一定の金額を、毎月積み立てて株式などで運用する。その成果を将来の自分の年金として取り崩す。こちらは積み立て方式という。

 80年前に終戦を迎えるまで、わが国の年金制度は積み立て方式だった。しかし戦後、インフレの進行で制度の継続が難しくなる。そこで国民全体で老後の生活を支え合うため、賦課方式に移行した。

 ちなみにドイツやスウェーデンは、賦課と積み立てを組み合わせて公的な年金制度を運営している。日本でも、そうした制度変更が必要との指摘は多いが、なかなか変革への議論が進みにくい。

 医療、年金に加えて、介護保険の重要性も高まっている。満40歳を迎えた人は、介護保険料を納める。40代といえば子育て世代でもあり、昨今の物価高もあって家計のやりくりに悩む人も多い。

 そもそも日本の制度は、基本的に人口増加を前提にして設計し運営している。この前提が狂い始めているため、現行制度では人口減少に対応できない。1965年当時、現役世代約9人で65歳以上の高齢者1人を支えたのが、2012年には約2人で1人を支えている。2050年には、1人で1人を支えるようになると予想される。

 こうした社会保障の負担増加は、大きく租税の負担や保険料の支払い、さらには財政支出の負担でカバーされている。これらを合算して「国民負担」という。高齢化が進むと社会保障の給付は増える。それに伴って社会保障の国民負担を引き上げた国は多い。