日本の「中福祉・低負担」制度は
「国民の借金」に依存しているから

 社会保険負担を国際比較すると、日本の医療、年金、介護などの給付(福祉)と負担の特徴が明らかになる。ここに、大きな問題がある。

 財務省によると2015年の時点で、経済協力開発機構(OECD)加盟国中、GDP比で見たわが国の一般政府の社会保障支出(社会保障のベネフィットの水準)を並べると、中位3分の1に位置する。1990年と比較すると、給付の水準は向上している。

 本来なら、給付が増えるに従って国民負担も大きくなるはずなのだが、わが国ではそうした変化が起きなかった。国民負担率(対GDP比)を見ると、おおむね30%程度とさほど変化していない。2015年、わが国の国民負担の水準はOECD加盟国の下位3分の1に位置した。似た位置にいるのが、米国だ。個々の自己責任や自助努力を重視する国である。米国の社会保障制度は「低福祉・低負担」といわれている。

 冒頭で解説したが、日本は「中福祉・低負担」である。日本と同じ程度の社会保障水準を提供している主要先進国にオランダがある。2015年、オランダの国民負担率は40%近かった。スウェーデン、フィンランド、ドイツ、イタリア、ベルギー、フランスなどは社会保障の水準が高い分、国民の負担も高い。

 人口の規模などの影響もあるが、国際的に見ると日本の社会保障の負担は低く、給付は中程度である。専門家は、「中の〈上〉程度の給付を、低負担で運営している」とも指摘する。

 中福祉・低負担を支えたのは、公費負担の増加だ。1990~2018年で日本の社会保障給付額は約47兆円から122兆円に、2.5倍も増えた。負担(財源)面では、保険料が1.8倍増に対し、公費は3.1倍増である。社会保障制度の経費は雪だるま式に増え、足元では一般会計予算歳出の33%を占めている。

 バブル崩壊以降、日本経済は停滞し税収は伸び悩んだ。政府は超低金利で国債の発行を増やし、社会保障制度を維持したのである。要するに、日本の医療や年金、介護制度は「国民の借金」に依存している。低金利が続いた分、事態の深刻さに、多くの国民は気づきにくかった。

 しかし、こうした状況は限界を迎えている。少子高齢化・人口減少、かつ日本もいよいよ金利が上昇する可能性が高い。社会保障関係費に続いて、国債費も急増している。日本はこれまで通りの財政、社会保障制度を続けるか、岐路に立たされているといっても過言ではない。