旧民主党政権で大きな成果
消費税率を上げ社会保障の財源に

 財政悪化と社会保障の持続可能性は、表裏一体の関係にある。財政健全化には、基本的に経済成長、歳出の削減、増税の3つの解決策がある。高市政権は、主に減税などで経済成長を実現し、財政健全化につなげようとしている。しかしその考えに基づいて国民会議を設置しても、多くを期待することは難しいだろう。

 社会保障制度に関する国民会議は、今回が初めてではない。2008年、福田康夫首相(当時)が「社会保障国民会議」を設置し、国民負担のあり方、財政の健全化、社会保障制度の修正につなげようとした。

 その後、旧民主党政権は「社会保障制度改革国民会議」を設置した。大きな成果となったのは、2012年の野田内閣(当時)の「社会保障・税一体改革大綱」だった。大綱は、社会保障と税の一体改革の実現に、消費税の税率を引き上げ、社会保障の財源にするとした。野田政権の取り組みは、後の消費税率引き上げにつながった。

 財政の健全化、社会保障制度の持続可能性の維持に、消費税の引き上げは避けられない可能性が高い。1990年代以降、欧州諸国はわが国の消費税に相当する付加価値税を引き上げ、社会保障制度の維持と財政健全化に取り組んできた。労働市場の改革なども断行している。

 日本では消費税引き上げに抵抗感を持つ人が多い。所得の低い人ほど消費税負担は増える(逆進性)。中小零細事業者からすると、消費税率を引き上げれば一時的に景気が減速することへの不安もあるだろう。

 ただ、冷静に振り返ると過去の消費税率引き上げの後、1年ほど経過すると個人消費は回復した。つまり、消費税率3%→5%→8%→10%(標準税率)に、人は次第に慣れていった。この前例を踏まえるなら、消費税引き上げへの国民コンセンサスを形成し、幅広い世代で年金、医療、介護などの財源確保を検討するのは相応の意味がありそうだ。給付付き税額控除も、この文脈の中で議論してもいいだろう。

 それと同時に、高齢者の医療費負担、医薬品の保険適用範囲、病院への支援のあり方などを見直して、歳出も改革しなければならない。こうした指針を示して実行することこそ、政治本来の仕事であり、国民会議の目的だろう。国民会議の成果とは、首相が痛みを伴う改革から逃げず、真正面から取り組むか否かが何よりも大切だ。