ドクターイエローPhoto:PIXTA

大人の日々は「選択」の連続です。ピンチをチャンスに変えるには、どうすればいいのか。高い評価や人望や信頼をたくさん得られるのは、どっちの選択肢か。微妙な状況への立ち向かい方を通じて、より大きな幸せをつかめるトクな道を探りましょう。(コラムニスト 石原壮一郎)
※「お悩み」は編集部で作成した架空のモデルケースです。

今回の「お悩み」

 出張で新幹線のホームに行ったら、めったに見られない「ドクターイエロー」が停まっていた。

 うれしくてスマホで写真をパシャパシャ撮っていると、後ろから立派なカメラを持った若者に「オッサン、邪魔なんだよ!」と怒鳴られた。オッサンは事実なのでいいとして、いきなり怒鳴られたのは不愉快である。

 言い返すか。黙って立ち去るか。さて、どうしたものか?

選択のポイント

 いわゆる「撮り鉄」と呼ばれる人たちの中には、残念ながら「いい写真を撮りたい気持ちが暴走して理性がなくなる困ったタイプ」が、ごくまれにいらっしゃいます。

 この若者もドクターイエローへの愛が高じて、我を忘れて怒鳴ってしまったのでしょう。ちなみに、JR東海のドクターイエローは引退しましたが、JR西日本が所有している車両は今も現役です。

 もし「あの、申し訳ありませんが」と丁寧にお願いしてくれたら、「あ、失礼」と素直に移動してあげたはず。しかし、いきなり怒鳴られたら凶暴な気持ちになります。

「なんだと、コノヤロー!」とスゴんだら、たぶん相手はおとなしく引き下がるでしょう。ひと工夫して「えっ、邪魔なの?どこに行けばいい?」と言いながら、わざとカメラの前をウロウロしながら近づいていくのも一興は一興。

 ただ、想像している分には痛快ですが、実行するにはそれなりに度胸が必要だし、じつは気持ちよくもなさそうです。

 一方、ムカつきを抑えて怒鳴った若者をちょっとにらみつつ、黙って立ち去るという選択肢はどうか。頭で考えている分には「ヘタレな対応」に感じられるかもしれません。

 しかし、相手が凶暴なタイプだったら、言い返すと困った事態を招いてしまいます。ムカついた気持ちも、所詮は通りすがりの関係なので、長続きはしないでしょう。

 言い返したところで、結局は同じ穴のムジナになるだけ。ここは「黙って立ち去る」ことで、ホームの平和と自分の人生の平和を守るのが、大人の賢明な選択です。

石原壮一郎・コラムニストのプロフィール