死んだふりは意味ある?
クマに出会ったときの対処法

 山や森を歩いているとき、不意に目の前にクマが現れたら――多くの人がまず思いつくのが死んだふりでしょう。しかし、実はこれ、クマと出会ったすべての状況で有効なわけではないって知っていましたか?

 たとえば、子グマを連れた母グマに出会ったときのように、クマが“防衛のため”にこちらを威嚇してきた場合は、向き合ったまま静かにするのが効果的といわれています。クマは「自分や子どもが守られている」と判断すれば、去っていくことがあるからです。

 ここで、注意すべきは好奇心や空腹で近づいてきた場合です。このときにじっと動かないでいると、「動かない=無抵抗な獲物」と判断されてしまう可能性も。つまり、死んだふりが逆効果になることもあるのです。

 では、正しい対処法はというと、まずはクマとの距離があるうちに、あわてず、静かに後ずさりして距離を取ることが基本です。背中を向けて走っては絶対にいけません。逃げようとする動きは、クマの追跡本能を刺激してしまう恐れがあります。

「クマに出会ったときは死んだふりをするといい」という言い伝えは広く知られていますが、これは必ずしも科学的に正しい対応とはいえないので注意しましょう。

クマが執念深く人を追うイメージがある理由
クマが人間を食べ物と扱った衝撃の事件

「クマは一度狙った相手を、何日も追いかける執念深い動物なのでは?」――そんな印象を持たれるきっかけになったのが、1970年、北海道・楽古岳(らっこだけ)で起きた大学ワンダーフォーゲル部のヒグマ襲撃事件です。

 この事件では、山中で野営していた学生たちがヒグマと遭遇。最初の襲撃のあと離れたかに見えたヒグマが、何度もテント周辺に戻ってきては襲撃を繰り返し、最終的に3名が命を落とすという深刻な事態となりました。ヒグマは数日にわたって現場周辺にとどまり、学生たちをつけ回すような行動を見せたことから、「クマは人を執念深く追いかける」というイメージが広く知られるようになったのです。