クマは目が悪いけど、動くものはバッチリ見える!
視力は動きを察知する大切な感覚

「クマって目が悪いって聞いたけど、じゃあ人を見つけられないの?」。そう思う人もいるかもしれません。確かに、クマの視力そのものは人間よりやや劣るとされており、遠くの静止したものをくっきりと見分けるのは、得意ではないといわれています。

 その理由のひとつが、クマの眼球が頭の大きさに対してやや小さいという特徴。これはカメラでいえば“レンズの大きさ”が小さい状態で、細かな識別に少し限界があるということです。しかし、視覚が退化しているわけではありません。むしろ、クマは視覚を補助的なセンサーとして上手に活用しているのです。特に注目すべきは、動体視力の鋭さ。じっと動かずにいる人には気づかなくても、ちょっと動いた瞬間にサッと反応するという事例が数多く報告されており、「動くものを捕らえる」能力には非常に優れていることがわかっています

 さらに、クマは視覚・嗅覚・聴覚を連携させて情報を処理しています。たとえば、「においで気配を察知」→「音でおおよその距離を把握」→「動きで視覚的に確認」というように、複数の感覚を組み合わせて状況を判断しているのです。つまり、クマにとって視力は“動きや異変をピンポイントで察知する”ために最適化された感覚なのです。

クマの耳は高音に敏感な“音の探知機”
音を瞬時に聞き分けて、身を守る

 クマといえば鼻がとてもいい動物ですが、実は「耳」も優れた感覚器官です。なかでも特徴的なのが、高周波や低周波の音に対する鋭さ。人間にはほとんど聞こえないような音域でも、クマは正確に聞き分けることができます。

 たとえば、小動物が草を踏んだ音、細い枝が折れる音、葉と葉が擦れるかすかな気配……。クマはこうした自然界の微細な高音をキャッチして、周囲の変化を察知しているのです。