さらに興味深いのは、クマが「音の種類によって行動を変える」ことができるという点。同じ「カサッ」という音でも、風が葉を揺らした音か、人間が近づいた音かを聞き分けて、逃げる、確認する、無視するなど、状況に応じた反応を選んでいるのです。

 また、クマは高音だけに反応するわけではなく、足音や地面の振動、落下音などの低音も感知します。おおよそ20Hz~30kHzの範囲を聞き取れるとされ、これは人間の聴力(約20Hz~20kHz)よりも広いレンジです。

 ただし、行動にもっとも影響を与えるのは、やはり突然の高音や人工的な音。これらはクマにとって“自然ではない異変”として認識され、特に警戒されやすい傾向にあります。だからこそ、森のなかでクマとの距離を保つには、「音の出し方」も非常に大切なポイントです。

年々増加している
「新世代クマ」って!?

 近年、全国でクマの目撃情報が急増し、人里に現れるケースも珍しくなくなってきました。なかでも注目されているのが、いわゆる「新世代クマ」と呼ばれる存在。これは従来のクマとは異なる“行動パターン”や“習性”を持つとされる、比較的新しいタイプのクマたちのことです

 たとえば、人間の存在や生活音に対する警戒心が薄く、昼間でも平然と民家周辺に現れる。あるいは、人間が捨てたゴミや農作物などを食べ慣れてしまい、食べ物目当てに定期的に出没する……。そんな行動が報告されています。

 背景にあるのは、山奥に十分なエサがない年があること、親グマが人里に近づいて食べ物を得る行動を子グマに見せて“学習”させていること、そして人間がクマにとって「必ずしも危険ではない」という成功の経験を積んでしまったことです。これにより、本来であれば人を避けるはずのクマが、「近づけば食べ物がある」と認識するようになってしまいました。