特に問題なのは、そうした経験を積んで育った“新世代”のクマたちは、人間との距離感が最初から近いということ。対策をしないままでいると、さらに多くのクマが人の暮らしのなかへと入り込んでしまうかもしれません。新世代クマとは、クマの側の問題ではなく、私たち人間の暮らし方の“鏡”でもあるのです。

クマに出会わない努力が
何より一番大切

 山や森に入るとき、クマに遭遇するリスクは常に存在します。しかし、もっとも安全で確実な対策は「クマに出会わないこと」です。遭遇してから対処するのではなく、そもそも出会わないように工夫することこそが、命を守るための第一歩といえるでしょう。

 そこでまず大切なのは、事前の情報収集です。出かける場所でクマの目撃情報があるかどうかを確認し、出没が報告されている場所には近づかないようにします。また、クマが活動しやすい早朝や夕方の時間帯は避け、人の少ない場所では特に注意が必要です。

 次に、山歩きの際はクマに人の存在を知らせることが有効でしょう。鈴を鳴らす、要所で手をたたく、会話をするなどしてクマにこちらの存在を伝えることで、クマが先に人を察知して避けてくれる可能性が高まります。音を出すことを面倒がらず、こまめに意識してみてください。

 さらに、単独行動は避け、複数人で行動することも効果的です。クマは基本的に臆病な性格なので、大きな集団や騒がしいところには近づこうとしません。また、食べ物やゴミは必ず持ち帰り、においを周囲に残さないようにすることも忘れないようにしましょう。