「あまりにめちゃくちゃじゃないですか」
司之介は帰宅すると、トキたちに怪談よりも哀しい話の一部始終を語って聞かせる。
三之丞の「社長にしてください」の話にトキたちは唖然(あぜん)となる。
「あまりにめちゃくちゃじゃないですか」とフミ(池脇千鶴)。松野家もたいがいめちゃくちゃな家族だが、さすがにここまでは……ということだろう。
司之介がただ黙って見ているだけだったのは、自分に見られたくないだろうという武士の情け。トキがタエに対して行ったことと同じだ。
三之丞は懲りずにほかの店でも社長にしてくださいと嘆願し、ボッコボコにされる。
橋のたもとでひっくり返っている三之丞に手を差し伸べたのは、ヘブン(トミー・バストウ)だった。が、その手をとらず三之丞は去っていく。
お地蔵さんにお供えされたおにぎりに目をやる三之丞。アリがたかっているが、空腹に耐えかね思わず手を出しそうになるが、ぐっと我慢。武士は食わねど、精神。
あばら家に戻ってくると、タエが縁側に凛と正座している。これぞ掃きだめに鶴。タエの襟元がかなり痩せて見える。
物乞いで得たわずか1銭銅貨1枚を三之丞に渡して何か買ってきてとタエが頼む。
お供え泥棒は決してせず、自分の力で得たお金で買い物をする。ちっともめちゃめちゃではない、道理に合った生き方である。でも、こんなにも不器用な生き方があっていいものだろうか。
ふかし芋を買った帰りに、三之丞はトキと鉢合わせ。
太鼓橋の高くなったほうにトキが立っているので、トキのほうが背が高く見えて、三之丞がますます弱って見えた。









