「あまりにめちゃくちゃじゃないですか」

 司之介は帰宅すると、トキたちに怪談よりも哀しい話の一部始終を語って聞かせる。

 三之丞の「社長にしてください」の話にトキたちは唖然(あぜん)となる。

「あまりにめちゃくちゃじゃないですか」とフミ(池脇千鶴)。松野家もたいがいめちゃくちゃな家族だが、さすがにここまでは……ということだろう。

 司之介がただ黙って見ているだけだったのは、自分に見られたくないだろうという武士の情け。トキがタエに対して行ったことと同じだ。

 三之丞は懲りずにほかの店でも社長にしてくださいと嘆願し、ボッコボコにされる。

 橋のたもとでひっくり返っている三之丞に手を差し伸べたのは、ヘブン(トミー・バストウ)だった。が、その手をとらず三之丞は去っていく。

 お地蔵さんにお供えされたおにぎりに目をやる三之丞。アリがたかっているが、空腹に耐えかね思わず手を出しそうになるが、ぐっと我慢。武士は食わねど、精神。

 あばら家に戻ってくると、タエが縁側に凛と正座している。これぞ掃きだめに鶴。タエの襟元がかなり痩せて見える。

 物乞いで得たわずか1銭銅貨1枚を三之丞に渡して何か買ってきてとタエが頼む。

 お供え泥棒は決してせず、自分の力で得たお金で買い物をする。ちっともめちゃめちゃではない、道理に合った生き方である。でも、こんなにも不器用な生き方があっていいものだろうか。

 ふかし芋を買った帰りに、三之丞はトキと鉢合わせ。

 太鼓橋の高くなったほうにトキが立っているので、トキのほうが背が高く見えて、三之丞がますます弱って見えた。

タエ(北川景子)の「変わり果てた姿」に、おトキ(高石あかり)ショックも…“武士の情け”で見て見ぬふり〈ばけばけ第29回〉
タエ(北川景子)の「変わり果てた姿」に、おトキ(高石あかり)ショックも…“武士の情け”で見て見ぬふり〈ばけばけ第29回〉