「経営学の父」と呼ばれるのは誰か、あなたは即答できますか?
その名は――ピーター・ドラッカー。
彼が残した言葉は、時代を越えて世界中の経営者やビジネスパーソンの指針となっています。なぜ没後20年近く経った今も、ドラッカーは読み継がれ続けるのか。
『かの光源氏がドラッカーをお読みになり、マネジメントをなさったら』の著者である吉田麻子氏に、現代にこそ響くドラッカーのメッセージを伺いました。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局 吉田瑞希)

「私らしく働く」って何?ドラッカーが教えてくれた答えPhoto: Adobe Stock

働く女性に響くドラッカーのメッセージ

――吉田さんが主宰するドラッカーの読書会では、働く女性の参加が増えてきたと伺いました。ドラッカーを学ぶことで、働く女性が「より自分らしく生きる」ために得られる一番のメッセージは何でしょうか?

吉田麻子(以下、吉田):「自分が輝けるのはここじゃない」「上司や部下や同僚に見せている私は私じゃない」

今の仕事で自分らしさを生かせずに悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。

私が30代の頃にドラッカーと初めて出会い、読書会で先輩たちを見てとても感激したのは一人ひとりがとてもいきいきとしている様子でした。

どうしてこんなに楽しそうなのだろう?

好奇心をもって読書会の門を叩いたのを覚えています。

あとになってわかったのは、ドラッカーの「強みを生かす」という考え方がただ単に仕事で得意分野を発揮するということではなく、もっと深く本質的なものであることです。

つまり、英語が得意だから英語を生かすということかと思っていたのですが、実際にはその人が英語を話せるようになるにあたって使ったその人本来の資質、つまりスピーディで行動力があるとか、ゆっくりで慎重だというような持ち前のものを生かすというマネジメントなのだとわかったのです。

小さいころから「慎重すぎる」「スピードが遅い」と言われてきた性分を、自分の“弱点”だと思っている人は少なくありません。けれどドラッカーの視点に立つと、それもまた“強みの原石”になり得ます。

丁寧に物事を進める人は、リスクを回避し、品質を守る力を持っています。

一方で、スピーディに動く人は、変化に即応する強みを持っている。

どちらも違う形で組織に貢献できる“資質”なのです。

そして組織の一人ひとりがその人ならではの資質を組織の成果に差し出すことによって「凡人を非凡にする」組織の文化をつくることができる。

これができたらいきいきする人が続出だ!と思わず胸が高鳴ったものです。