――たしかに、吉田さんの著書『かの光源氏がドラッカーをお読みになり、マネジメントをなさったら』でも、最初はおとなしすぎたり、落ち着きがないと見られていた侍女たちが、それぞれの強みに目を向けることでいきいきとしだす場面が描かれていますね。

吉田:はい。ドラッカーは『マネジメント』でこう述べています。

「組織とは、個としての人間一人ひとり、および社会的存在としての人間一人ひとりに貢献を行わせ、自己実現させるための手段である」

つまり、組織とは人を縛る枠ではなく、人が自らの力を生かして、社会に貢献するための“手段”なのです。

「働く」という行為の根底には、誰かの役に立ちたいという思いがある。そしてその思いを通して、人は自分らしさを見出していくのだと思います。

ドラッカーはさらに、こうも言っています。

「私的な強みは公益となる」

自分が得意とすること、好きなこと、夢中になれること――それらを社会に向けて差し出すとき、それは単なる“個人の光”ではなく、“社会の光”に変わります

自分の中の小さな光を、他者のために使うこと。それが、ドラッカーのいう“人間への信頼”の実践なのだと思います。

「強みを生かす者は、仕事と自己実現を両立させる」

吉田:現代の女性たちは、働き方も生き方も実に多様です。

家庭を支える人、組織を率いる人、フリーランスとして挑む人。けれど、どんな立場にあっても「自分の強みを社会のために生かす」という視点を持つことで、仕事も人生も、より有機的につながり始めます。

ドラッカーは『経営者の条件』で、こうも語っています。

「強みを生かす者は、仕事と自己実現を両立させる」

この言葉のとおり、自分の強みが他者の喜びにつながった瞬間、私的な力は公益へと変わり、仕事は単なる労働ではなく、“生きることそのもの”につながっていくのではないでしょうか。