信託報酬率が無視できる範囲内だと想定すると、投資額1680万円は35年後には約8200万円に増えている計算です。もっと堅めに外貨MMFのように年利4%の金融商品に投資をしたとしても、35年後の資産は約3700万円に増えます。新NISAですから増えた分への所得税は払わなくても大丈夫。

 そして35年後がやってきたとします。

 住宅ローンの借入れ残高は当初の6400万円から返済が進んで約2600万円になっています。ここでオルカンを全部売却して住宅ローンを繰り上げ返済しましょう。するとどうなるでしょうか?

 あなたの手元には現金5600万円の老後資金と購入したマンションが一部屋残ることになります。すごいでしょ?

 まるで怪しい手品のような方法ですね。いったい何をやっているのか、経済的な種明かしを解説してみたいと思います。

 実はここでの最大のポイントは、50年間を固定金利で貸し出すフラット50の金利がリスクを勘案した経済合理的な水準よりも低すぎる水準に設定されていることです。

 本来であれば短期の定期預金を集めて貸し出しを行うメガバンクや地銀が50年の長期固定ローンを貸し出すこと自体が、経済学の世界でいうとリスクを無視したおかしな話なのです。

 ところが住宅ローンは国民に向けた国策であることと、銀行から見ても貸出残高が銀行経営の中で許容できる大きさであることから、あえて国民に対して有利な「50年、固定金利1.99%」という条件で貸し出されているのです。

 一方で世界の株式市場全体の成長スピードは長期的に金利を上回ります。インデックス投資ならあらゆるリスクを平均化して最もリスクは小さくなります。そして35年という長期の投資期間では、複利のマジックで投資金額は雪だるま式に膨れ上がります。これがオルカンという金融商品の前提です。

 ですから経済学的な知識を前提に考えると、今回紹介したようなマジックが成立するのです。

 最後にもう一度、魔法について説明して終わりましょう。やることは、「フラット35で借りても返済できる物件をみつけ、実際はフラット50で借り入れて、差額を35年間新NISAで運用する」です。このやり方は、変動金利でも成立しますが、毎月の支払額が計算できる点で私は固定金利での借入をお勧めします。

 あくまで理論的にはそうなるのですが、隠れたリスクとして戦争で日本が破滅するとか、人類がAIに支配されて世の中のルールががらりと変わった場合は、35年後の人生計画が狂ってしまうかもしれません。実際にそれをやるかどうかはあくまで個人のリスクでお試しください。お気をつけて。