2024年2月6日 AirJapan就航前発表会 Photo by Koji Kitajima
ボーイング787を「喉から手が出るほど」
欲しかった切実な背景
統合劇の直接的かつ最も強い動機は、ANA本体が直面していた深刻な機材不足の解消だ。航空需要、特に訪日外国人(インバウンド)需要が急回復したものの、フラッグシップとなるボーイング777Xの導入遅延や、世界的なAOG(整備待ちで運航できない航空機)増加の影響を被って、ANA本体はボーイング787を「喉から手が出るほど」必要な状況に陥っていた。
AirJapanの機材体制はボーイング787が3機のみ。グループ全体で機材不足なので、AirJapanが路線を拡大しようにもできない状況だった。むしろその3機はANA本体の基幹路線に投入した方が、はるかに大きな収益を生む。AirJapanという「実験」を継続するよりも、貴重な機材を最も利益を生む場所に差配することは、グループの全体最適を考えれば当然といえる。
2024年2月6日 AirJapan就航前発表会にて Photo by Koji Kitajima
パイロットや客室乗務員は
リストラされるのか?
さて、グループ再編でブランドが統合されると聞くと、一般的に「従業員はリストラされるの?」と思われがちだ。しかし、そうではない特異な事情がある。
なぜならAirJapanの運航会社であるエアージャパンは、そもそもANA本体のパイロットや客室乗務員(CA)の「高い人件費を圧縮」する目的も兼ねて設立された会社だった。雇用が柔軟な外国人パイロットや、技術は高くても給与の低い加齢パイロットを採用し、CAも再雇用(ANAでは「リジョイン採用」というらしい)形態で集めるなど、ANA本体に比べて人件費は低く抑えられている。
ブランドは休止だが、運航会社は存続し、パイロットやCAの採用も継続している。今後は、同社で雇用した人材をANAブランド、AirJapanブランド2カ所での業務から、ANAブランドのみにするだけであり、契約内容は変わらず、ANAグループ全体の人件費に変わりはない。
というわけで、むしろ、この統合は一石二鳥の側面を持つのだ。ANA本体が渇望する機材を確保できる上、国際線対応可能なパイロットやCAをANA本体の運航体制に組み込める。コストの上昇は発生しない。







