会社やチームのリーダーとして、いま、求められているリーダーとはなんだろうか? 責任をとること? 部下やメンバーの話をよく聞いて、仲を深めること?
『リーダーの言語化 「あいまいな思考」を「伝わる言葉」にする方法』の著者である木暮太一氏は、リーダーの本来の役割は、どこに向かって進むべきかを「言葉で明確に伝えること」だと話す。本記事では、木暮氏に「言語化」について教えてもらう。

【採用難の本質】なぜ「いい人材ほど」あなたの会社を選ばないのか?Photo: Adobe Stock

採用できない理由は「魅力が伝わらない」から

「求人を出しても全然応募が来ない」「面接まで進んでも辞退される」「内定を出しても入社してもらえない」。最近、こんな採用の悩みを聞くことが本当に多くなりました。

多くの経営者が「中小企業には人が来ない」とおっしゃっています。しかし、採用がうまくいかない本当の理由は「自社の魅力が伝わっていないから」です

ここを表現できれば採用できますし、実際にぼくがサポートしてきた企業では多額の採用費をかけなくても優秀な人材を採用できています。

多くの企業が「給与○○万円」「賞与年2回」「各種社会保険完備」といった条件面をアピールしています。でも、これらの条件は他社と大差ないことがほとんどです。しかも中小企業では、大手ほど金額的にいい条件を出せません。そのため、求職者からすれば「どこも同じような会社で、どこも『まぁまぁ』だな」という印象しか持てません。

もちろん条件面は提示しなければいけません。ですが本当に大切なのは、自社で働くことの「意味」や「価値」を伝えることですそして、その意味や価値を伝えるためには、自社がどんな価値観を持っているのか、どんな働き方を求めているのか、逆にどんなことは求めていないのかを明確に言語化する必要があります

求職者が本当に知りたいのは「職場の“べき論”」

ぼく自身が転職活動をしていた時のことを思い出してみると、面接で一番知りたかったのは「この会社ではどんな働き方をするのか」「どんな人たちと一緒に働くのか」ということでした。

給料や休日の条件も重要でしたが、それ以上に「自分がこの会社でやっていけるのか」「居心地よく働けるのか」が気になっていました。同じように感じていた方も多いと思います。

ところが、多くの企業の採用情報では、こうした職場の空気感が全く伝わってきません。アットホームな職場です」「風通しの良い会社ですといった表現はよく見かけますが、非常に抽象的で実際には何も理解できません。

求職者が本当に知りたいのは、当たり障りのないフレーズではなく、「職場で自分が何をできるか、そして職場から何を求められているか」です。

実際、新卒学生に対し「業界選びで重視していること」を複数選択で調査したところ、「やりがいを感じる」が58%で最多でした。続いて、「働きやすい」(44.5%)、「自分の能力を活かせる」(40%)、「人に魅力を感じる」(32.8%)という結果でした(株式会社インタツアー調べ、2023年)。

「この会社では、どんなことが『当たり前』とされているのか?」
「どんな行動や考え方が評価されるのか?」
「逆に、どんなことは『やらなくてもいい』とされているのか?」
「どんな人が働きやすい環境なのか?」

これらの疑問に答えるためには、自社の価値観を明確に言語化する必要があります。そして、その価値観を表現する最も効果的な方法が、「べき論」と「notべき論」を整理することなのです