べき論とnotべき論のバランスが重要

自社の魅力を伝える際に注意すべきなのは、べき論とnotべき論のバランスです。べき論ばかりを強調すると「厳しそうな会社」という印象を与えてしまいますし、notべき論ばかりだと「緩すぎる会社」という印象になってしまいます。

理想的なのは、「この部分はしっかりとやってもらいたいが、この部分は自由度がある」ということが明確に伝わることです

例えば、ある中小企業では以下のように表現していました。

【べき論】 「お客様との約束は絶対に守るべき。商品の納期は絶対なので、場合によっては休日出勤があり得ます」 「チームメンバー同士で助け合うべき。週に1回、『困っていること』をお互いに話す会議を設けています」
【notべき論】 「長時間働く必要はありません。基本的に定時で帰社できるように業務量を調整しています。」 「飲み会や懇親会への参加を強制しません。参加したい人だけ参加すればOKです」 「直行直帰も認めており、朝礼にはリモートでの参加でも構いません」

このようにバランスよく表現することで、「メリハリのある会社」という印象を与えることができます。

具体的なエピソードで伝える

べき論とnotべき論を伝える際に最も効果的なのは、具体的なエピソードを交えることです。抽象的な表現だけでは、求職者にとって「よくある綺麗事」に聞こえてしまいます。

例えば、「失敗を恐れる必要はない」というnotべき論を伝える場合:

【抽象的な表現】 「当社では失敗を恐れる必要はありません。挑戦する姿勢を評価します」
【具体的なエピソード】 「先月、入社2年目のメンバーが新しい営業手法を提案し、実際に試してみました。結果的にうまくいかなかったのですが、そのメンバーは『挑戦賞』として表彰されました。なぜなら、失敗から多くの学びを得て、それを他のメンバーにも共有してくれたからです」

このような具体的なエピソードがあることで、求職者は「本当にそういう文化があるんだな」と信じることができます。

求める人物像を「べき・notべき」で表現する

従来の求人では「コミュニケーション能力の高い方」「積極的な方」といった抽象的な表現で求める人物像を表現していることが多いです。でも、これでは具体的にどんな人を求めているのかがわかりません。

そこで、求める人物像も「べき・notべき」で表現してみましょう。

【従来の表現】 「コミュニケーション能力の高い方を求めています」
【べき・notべきでの表現】 「自分と違う意見をしっかり聞くべきだと考える方」
「わからないことは素直に質問するべきだと思う方」
「一方で、社内では体裁にこだわる必要はないと考えている方」
「完璧な話し方である必要はないと思っている方」

このように表現することで、「あ、自分のことだ」と感じる求職者が応募してくれる可能性が高まります。

また、採用面接では、候補者が自社のべき論とnotべき論に共感できるかどうかを確認することが重要です。スキルや経験だけでなく、価値観の適合性を見極めることで、入社後のミスマッチを防げます。

具体的には、以下のような質問が効果的です。

「当社では『お客様との約束は絶対に守る』ことを重視していますが、どう思われますか?」
「効率よく仕事を終わらせて定時に帰ることを推奨していますが、そういう働き方についてどう感じますか?」
「失敗を恐れずに挑戦することを評価する文化がありますが、そういう環境で働くことについてはいかがですか?」

これらの質問を通じて、候補者の価値観と自社の価値観が合致するかどうかを確認できます。