自社の「べき論」を言語化する

まず、自社がメンバーに対して持っている「べき論」を洗い出し、言語化してみましょう。べき論とは、「こうするべき」「こうあるべき」という価値観のことです

例えば、以下のようなものが考えられます。

「お客様第一で行動するべき」
「チームワークを大切にするべき」
「常に成長を求めるべき」
「時間を守るべき」
「報告・連絡・相談を徹底するべき」
「品質にこだわるべき」
「コストを意識するべき」

ただし、これらの表現はまだ抽象的すぎます。「お客様第一」といっても、具体的にどんな行動が求められるのかがわかりません。そこで、「なぜそう思うのか」「具体的にはどんな行動を期待しているのか」を掘り下げていきます。

例えば、「お客様第一で行動するべき」というべき論があるとしたら:

「なぜお客様第一なのか?」
「お客様に喜んでもらえることが、結果的に自分たちの成長につながるから」 
「具体的にはどんな行動を期待しているのか?」
「お客様からの問い合わせには24時間以内に返答する」
「お客様の要望に対して『できません』ではなく『こうすればできます』を提案する」 
「お客様との約束は絶対に守る。守れない場合は事前に連絡し、代案を提示する」

このように具体化することで、求職者は「この会社で働くとはどういうことか」をイメージできるようになります。

自社の「notべき論」を言語化する

べき論と同じくらい重要なのが「notべき論」、つまりこれはしなくてもいい」「こんなことは求めていない」という価値観です。こちらも言語化します。実は、求職者にとってはこちらの方が重要だったりします。

なぜなら、多くの人が転職を考える大きな理由のひとつは「今の会社で求められていることが自分に合わない」からです。前の会社で「絶対にやらされていたこと」が、新しい会社では「やらなくてもいい」とわかれば、大きな魅力として映ります

例えば、以下のようなnotべき論が考えられます。

「残業ありきで仕事を進める必要はない」
「飲み会に無理に参加する必要はない」
「上司の顔色を伺う必要はない」
「完璧を求めすぎる必要はない」
「一人で抱え込む必要はない」
「年功序列を気にする必要はない」

これらも、具体的に表現することが重要です。

例えば、「残業ありきで仕事を進める必要はない」というnotべき論があるとしたら:

「具体的にはどういうことか?」
「定時に帰ることを後ろめたく感じる必要はありません」
「効率よく仕事を終わらせて早く帰ることを推奨しています」
「残業するかどうかは個人の判断に任せています」
「残業する場合は理由を明確にし、上司と相談することをルールにしています」

このように表現することで、「働きやすそうな会社だな」という印象を持ってもらえます。

エン・ジャパン社の調査によれば、「転職後に感じたギャップ」の第1位は「人間関係(上司・部下・同僚など)が合わなかった」(50%)。一方で、条件面など定量的な就業条件に関わるギャップは少数です。定性的な情報が言語化されずにギャップに繋がっている状況がうかがえます。