数々の企業を再建してきたデヴィッド・ノヴァクは、世界の成功者100人から仕事も人生もうまくいくための知見を集め、『Learning 知性あるリーダーは学び続ける』にまとめている。本記事では、その一部を抜粋・編集し、特に「成功し続ける人になる秘訣」を紹介する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

【要注意】「正しいことをしているつもりで信頼を失う人」がやっていること・ワースト1Photo: Adobe Stock

思わず盗んでしまったあの日

私は軍隊ごっこが好きで、クリスマスプレゼントにもらった軍隊用の水筒がお気に入りだった。
いつも使っていたが、あるとき蓋をなくしてしまった。
10歳の少年にとっては大きなショックだった。

数週間後、この水筒を母に買ってもらった店で、同じ蓋を見つけた。
私は思わずそれをくすねた。

家に戻ってから、蓋があることに気づいた母から、どこにあったのかと尋ねられた。
嘘がつけず、「盗んだ」と答えた。
当然ながら、母は私を引き連れて店に戻り、蓋を返して店長に謝った。

私はその日、万引きはいけないことだと学んだ。
もちろん、正しい行いをするのに遅すぎることはない
どんな過ちを犯しても、引き返し、謝り、事態を正しく立て直そうとすることはできる。

112カ国に広がる100万人以上の従業員を擁する会社を経営している中で、この考え方はますます強まったが、最初にそれを学んだのは町から町へと引っ越していた子どものときだ。
善い価値観(たとえば「盗みはいけない」)は普遍的なものだ

史上最大の不正企業の社是

ヤム・ブランズを率いていた頃、リーダーシッププログラムを従業員に教える際に、私は他の会社が掲げていた次の企業価値を紹介していた。
内容が立派で、普遍的だったからだ。

敬意を持つ:自分がしてもらいたいように他人と接する。決して相手を傷つけたり、礼節を欠いたりはしない。
誠実さ:顧客や見込み顧客に対し、正直かつ誠実に仕事をする。
コミュニケーション:報告や連絡を怠らない。時間をつくって話し合い、耳を傾ける。
高い目標:常に最善の行動を目指す。各自が、職場全体の水準が上がるような行動を取る。それぞれが自分の能力を最大限に発揮することが歓迎されるような雰囲気をつくる。

この企業価値を掲げていたのは、不正会計によって何万人もの従業員の人生や経済を壊したエンロン社だ
同社は不正の過程でここに挙げたあらゆる価値観に背いた。

1869年8月28日、ペンシルベニア州ハリスバーグの新聞、ハリスバーグ・テレグラフに、次の金言が掲載された。
「物事を正しく行うのと、正しいことを行うのは別物だ。悪事を正しく行う者もいる」
これがエンロン社だ。
「一方、称賛に値する仕事を引き受けながら、そのやり方がお粗末な場合もある。つまり本当の格言は『正しいことを正しく行おう』だ」

あなたは誇らしい気持ちになれるだろうか?

私はよく、「正しいことをすれば正しいことが起こる」と伝えている。
そうすれば、周りから信頼され、後悔という重荷から解放され、希望を抱いて前向きに生きられる。

正しいことを正しく行えば、学びの機会も格段に増える。
他人がもっと多くを与えてくれるようになり、未来への展望も生まれる。
正しいことをするのは、自分自身への贈り物になる。
では、正しい選択肢を選び、正しい行動をとっているかどうかは、どのようにしてわかるのだろうか。

成功者になるためには、自分に対して正直になり、鏡に映る姿を嘘偽りなく評価しなければならない。
自分に正直になろうとすれば、大きな責任を求められる場合もある。
ヤム・ブランズ時代、最高財務責任者(CFO)のデイブ・デノは難しい判断が必要になったとき、ある基準を用いていたという。

それは、「この判断は“ウォール・ストリート・ジャーナル・テスト”に合格するか」というものだ。
つまり、その判断についての報道が明日のウォール・ストリート・ジャーナルの一面を飾ったら、嬉しく思うだろうか、誇らしく思えるだろうか、というテストだ。

このテストは、コスト削減や解雇など、難しい判断を迫られる場面で、用いることができる。

あなたもぜひ試してみてほしい。
「この判断を配偶者や子ども、上司に伝えるとしたら、気分が良く、誇らしくなれるだろうか」「この判断を会議や教会で伝えたら、誇らしい気持ちになれるだろうか」などと考えてみるのだ。

(この記事は『Learning 知性あるリーダーは学び続ける』をもとに、一部抜粋・編集して作成しました。)