そして、教室の天井についてのこの基準によって、当然ながら階段の高さも3m以上にする必要ができた。
また、この施行令の第24条では、高さ3mを超える階段には「踊り場」を設けることが義務づけられた。足を踏み外した場合に一番下まで落ちないよう、途中で止めるためである。
第二十四条 前条第一項の表の(一)又は(二)に該当する階段でその高さが三メートルをこえるものにあつては高さ三メートル以内ごとに、その他の階段でその高さが四メートルをこえるものにあつては高さ四メートル以内ごとに踊り場を設けなければならない
(筆者注:「前条第一項の表の(一)又は(二)」は小学校、中学校、高等学校を指す)
こうして、階段の高さの基準と踊り場についての規定が合わさって、学校の階段には必ず踊り場が設けられることになったのである(なお、高さが「ちょうど3m」の階段も、天井の厚みを考慮すれば「3m以上」とみなされるので踊り場が必要となる)。
天井の高さの基準値に
異議を申し立てるも……
だが教室の天井が高いと、その分だけ建物の建設コストがかさむ。2000年代に入り、小中学校の建て替え需要が高まるなかで、天井の高さを3mから2.7mに30cm低くするだけで必要な資材が減り、1校当たりの工費約30億円の約1.5%が節約できることがわかった。
教室の天井高さの基準値に対して最初に異議を申し立てたのは、埼玉県の草加市だといわれている。
2004年、国に対して、構造改革特区を申請したのだ。大人の働くオフィスや、海外の学校の教室でも、天井の高さは通常2.7メートルであることなどがその根拠だった。しかし、国土交通省からは「子どもの心身に与える影響の調査結果が出ていない」として却下された。
一方で2003年に大学のほうでは、天井の高さが規制緩和され、一般と同じ2.1メートル以上になっていた。
大学はおもに成人が利用する空間だからという理由からだったが、小・中・高等学校などについては、
「成長期にある児童・生徒、そういった方々が長時間学習等の活動を行っているという特性がございまして、視覚的な環境の保持、いわゆる圧迫感の緩和等に配慮するために天井の高さは3メートル以上でなければならないとしている」(2004年2月に内閣府で開催されたワーキンググループでの国土交通省の課長の発言)として見送られていた。







