古い学校の階段写真はイメージです Photo:PIXTA

学校の階段に当たり前のようにあった「踊り場」。そこで友人たちと会話した思い出を持つ人も多いのではないだろうか。しかし、なぜどの学校にも同じように踊り場が設置されているのだろうか。そこには、「学校の天井の高さ」が関係しているというが……?※本稿は、永井孝志・村上道夫・小野恭子・岸本充生『世界は基準値でできている 未知のリスクにどう向き合うか』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

高さ3mを超える階段に
「踊り場」が義務づけられた理由

 みなさんは小中学校時代、階段にはあたりまえのように「踊り場」があったのを覚えているだろうか。

 その理由の一端は、いまから140年以上前の1882(明治15)年に公表された、教育全般に関する文部省の基本方針にさかのぼることができる。

 この年に公表された、教育全般に関する文部省の基本方針『文部省示諭』の中で、小学校の天井の高さは「一丈に下らざるを要す」とされた。一丈は約3.03mなので、教室の天井の高さは最低でも3m確保せよ、ということである。

 通常の建物より天井を高くする目的は、当時は暖房装置が石炭ストーブだったので、室内空気を循環させて一酸化炭素中毒を防ぐことにあった。

 戦後の1950年に建築基準法が制定された際も、この基準は、当時の「すし詰め教室」の中で清浄な空気を保つためという理由で、建築基準法施行令の第21条に受け継がれた。

(居室の天井の高さ)
 第二十一条 居室の天井の高さは、二・一メートル以上でなければならない。
 二 学校(各種学校及び幼稚園を除く)の教室でその床面積が五十平方メートルを超えるものにあつては、天井の高さは、前項の規定にかかわらず、三メートル以上でなければならない。