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東京都健康長寿医療センターの報告によると、慢性的な痛みを抱えている高齢女性は、気づかぬうちに炎症を促す食事を摂っているようだ。
発熱、腫れ、痛みなどの「炎症」は、身体に侵入してきた異物を排除する過程で生じる。身体を防御する免疫反応で、普通は一過性に治まる。
一方、近年注目されている「慢性炎症」は、身体の老廃物や脂肪細胞などに免疫系が反応して、ごく軽度の炎症が長期的にくすぶり続けるものだ。動脈硬化症や認知症の発症にも深く関わるとされ、炎症性の物質が神経を刺激して原因不明の痛みが生じる、痛みが増強されて長引くなどの「慢性疼痛」との関連も指摘されてきた。
同センターの研究者らは、地域の高齢者を対象とした研究において、栄養素が炎症に与える影響を評価するDII(食事性炎症指数)で参加者の食事内容をスコア化。同時に肩、腰、膝のいずれかに3カ月以上痛みがあるか否かを聞き、食事内容との関連を調べた。
対象者2165人(平均年齢76.47歳、女性1006人)のうち、812人(37.5%)に慢性疼痛があり、痛みは腰痛、膝関節痛、肩関節痛の順に多かった。
DIIとの関連では、最もDIIスコアが高い(炎症誘発性)パターンの食事を摂っている女性は男性より慢性疼痛に悩む割合が高く、特に80歳超では影響が大きいことが判明している。また、抑うつ傾向があり、かつ高DIIスコアの女性は、年齢にかかわらず慢性疼痛を抱える割合が高いことも示された。
ちなみにDIIが高く、炎症誘発性が強い栄養素は飽和脂肪酸、トランス脂肪酸、砂糖、炭水化物などで、加工食品や菓子類中心の食生活が危ないパターン。一方、DIIが低く、抗炎症性の栄養素は食物繊維、抗酸化ビタミン、ミネラル、オメガ3脂肪酸などで、魚介菜食、玄米食などが該当する。
食事の支度は案外厄介だ。気分が乗らずおっくうなときはつい、手軽な加工食品で済ませがち。だからといって炎症誘発性食ばかりでは、慢性疼痛はもちろん、痛みで動きが制限され筋力や持久力も衰えてしまうだろう。
近年は、コンビニ弁当でも魚介菜食を意識したものが出回っている。それに抗酸化成分に富んだ季節の果物を添えて、抗炎症食を心がけてみよう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)







