「シジミ、シゴト、ゴクロウサマ」「ワタシ、ジョチュウ、シゴト」
帰宅して、桶(おけ)に水を入れてビアの瓶を浸し冷やして、待っていると、「ただいま かえりました」とヘブンが帰ってきた。
「ビアあります」と自信満々のトキ。
さっそく飲むぞーっと、ワインみたいにコルクでせんがしてあって、それをトキが開けたら、アンビリーバブル!
瓶から勢いよく溢れだすビール。まるでプロ野球選手の優勝ビールかけのようなことになった。
ヘブンはまっさきに写真立てを守る。
「これがこれが」とトキはびっくり。
慌てて、ビアがかかったところを拭いていると、ヘブンはうつろな表情で写真立てを見ている。次に、トキがかわいいと言った、わらのブードゥ人形を手にする。
ヘブンはすっかり落胆した様子で、「しじみ」と呼び捨てし、「しじみさん」と言い直し、「シゴト、ジョチュウ、ナイ」ときっぱり。トキがキョトンとなるので「シジミ、シゴト、ゴクロウサマ」と、さらにはっきり言う。
ここからの高石あかりのリアクションが鮮やか。「ああああ」と声を震わせ「ノーノー オーケー」と「ワタシ、ジョチュウ、シゴト」「ジョチュウ、シゴト」と話せるだけの英語を使って、ヘブンに哀願する。
まずは、台無しになったビアをもう1回、買い直すしかない。
店が近所で良かった。お金もふんだんにあるから何本でも買える。
トキが「山橋薬舗」に再び向かうと、遅れてヘブンも来た。なつかしい西洋のものがたくさんあって、ヘブンはご機嫌。
ヘブンとトキと山橋の3人はビアで乾杯。
トキがヘブンにおそるおそる注いだビアよりも、ヘブンの注ぎ方が断然うまく、泡がいいバランスになっていた。
はじめてのビアを飲んだトキはその苦さに薬かと疑う。そして、あっという間に酔っ払ってしまった。ヘブンも酔っていて、帰宅する間に、うきうきとスキップをはじめる。
トキがヘブンのスキップを真似(まね)るが全然うまく手足が動かない。
うまくないスキップの動きがうまい高石あかり。
橋のたもとで、へんな動きで跳ねているトキとヘブンに、街の人たちは薄気味悪く思ったことだろう。花田旅館からは、ツル(池谷のぶえ)とウメ(野内まる)が怪訝(けげん)そうな顔でふたりを見つめている。
酔っ払って楽しい気分になったのもつかの間、酔いがまわって、松野家に戻ると、フミに介抱してもらわないといけないほど、悪酔いして気持ち悪くなってしまった。
「クビになるー」と酔っ払いながら心配するトキが痛々しい。こういうぐだぐだな演技も高石はうまい。
朝ドラ絶対王者『おしん』(1983年)でもヒロインと幼なじみとふたりの思い人の3人がお酒を酌み交わすシーンが青春群像劇のようでエモいのだが、ヒロインがお酒を嗜む場面は朝ドラではそんなに多いほうではない。が、『虎に翼』(2024年度前期)からそうした場面が描かれることが増えた気がしている。女性だってお酒はふつうに飲むものだからだろう。
明るく爽やかで清潔感ある朝ドラヒロインから、お酒を飲んでぐだぐだになってしまうこともある。そんな親しみあるヒロインに移行してきているのを感じる。









