対話の目的は、単なる業務報告ではなく、キャリア志向や感情面にも踏み込み、心理的安全性を確保しながら「何を望み、どのような懸念を抱えているのか」を率直に引き出すことです。
リーダーの基本姿勢は、メンバーを「成果を出す装置」として見るのではなく、「成長し続ける存在」として尊重することです。人は有能感、自律性、そして良好な関係性が満たされることで組織へのコミットメントを強め、離職リスクを下げることができます。
そのため、定期的な1on1の時間を確保し、今後のキャリア展望や仕事への満足度を問い、メンバーが本音を語れる雰囲気をつくることが大切です。
エンゲージメント調査などの客観的な指標と組み合わせて、モチベーション低下の兆しを見逃さないように配慮します。また、メンバーの存在や努力を具体的な言葉で承認し、「見られている」という実感を与えることも効果的です。
実際、ある企業では、週に1回の短時間の対話を通じてエンジニアのキャリア欲求を丁寧に引き出し、それに応じた異動や研修機会を積極的に提供することで、優秀な人材の離職を大幅に防ぐことに成功しました。
総じていえば、適切な対話は「突然の退職」というネガティブなサプライズを防ぐ有効なセンサーとなります。心理的安全性が確保された場で率直な意見や感情を交換することで、問題を早い段階で発見し、改善策を講じることができるのです。
その結果、組織は優秀な社員を長期的に確保し、安定した成長基盤を築くことが可能になります。
メンタル不調による休職者に
「早く戻ってきて」は禁句!
弊社クロスリバーの調査では、休職者発生チームの78%で、休職発生前の6カ月と比べて残業時間が平均35%増加していて、その42%で新たなメンタル不調者が生じていました。
あるIT企業のリーダーは「踏ん張ろう」と声をかけ続けた結果、他のメンバーまで不安を訴え、自分自身も不眠に陥ったと語ります。
こうした状況に適切な対応を実践したチームには、ある共通点があります。
まず休職者本人に「早く戻ってきて」と催促しないことが基本です。
定期的なフォローは人事に任せ、復職時期は医師の判断を重視します。製薬会社の人事部長は「気にかけているが、決して急かさないことが大切」と述べます。







