会社やチームのリーダーとして、いま、求められているリーダーとはなんだろうか? 責任をとること? 部下やメンバーの話をよく聞いて、仲を深めること?
『リーダーの言語化 「あいまいな思考」を「伝わる言葉」にする方法』の著者である木暮太一氏は、リーダーの本来の役割は、どこに向かって進むべきかを「言葉で明確に伝えること」だと話す。本記事では、木暮氏に「言語化」について教えてもらう。
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なぜ、あなたの部下は「優先順位」をつけられないのか
ぼくが新人の頃の話です。
「今はそんなことやっている場合じゃないだろ!?」
「ちゃんと考えて仕事しろ」
毎日のように、ぼくは仕事の進め方に関して上司に怒られていました。仕事のクオリティ以前に、「いま、何をすべきか」を理解できていなかったためです。
「このメンバー、何を優先すべきか分かっていないな」
そんなことを感じるリーダーも多いと思います。締切が迫っている案件があるのに、なぜか緊急性の低い作業に時間をかけていたり、重要な会議の準備より、メールの返信を優先していたり、「いまが頑張り時!」というときに、イマイチやる気を出さないでいたりします。
これらは確かにメンバーが「いま、何を優先すべきか」を理解していないために起きている現象だと思います。リーダーとしてもストレスが溜まるシーンですね。
ただ、何を優先すべきかわかっていないのは、メンバーにやる気がないからとは言えません。能力が足りないからでもありません。「判断力」にあるのでもありません。
それらの前に、前提として「優先順位を理解できない環境」があることをリーダーは知らなければいけません。
「暗黙の了解」という幻想
多くの職場で、優先順位は「なんとなくわかるよね」で伝わっています。「これくらい、言わなくても分かるだろう」「社会人なら当然でしょ」とリーダーは思っていて、メンバーに対して明確には伝えません。
でも、あなたが「当然」だと思っている判断基準は、本当に「当然」なのかと言えば、そうではありません。
おそらく、あなたが考えている優先順位は、正しいのでしょう。しかしそれは、あなたが長年の経験で身につけた「暗黙知」であって、決して「常識」ではないんです。
たとえば、ある会社では「顧客からの問い合わせは最優先」が当たり前でも、別の会社では「社内の定例業務を先に片付ける」が基本かもしれません。あなたの会社では「スピード重視」が文化でも、新しく入ったメンバーの前職では「品質第一」だったかもしれません。
つまり、リーダーや組織が「当然共有されていると思い込んでいる価値基準」を、きちんと言語化していないことが、すべての混乱の始まりなんです。
ちなみに、ぼくが新卒で入社した富士フイルムでは、部内の打合せであっても資料は誤字脱字なく正確に作ることが求められました。
一方で、転職したサイバーエージェントでは、社長との打ち合わせであっても、手書きのメモで許されていました。むしろきれいな資料を作ると「こんなことに時間を使うな」と怒られます。
どちらがいい・悪いの話ではなく、組織によって、人によって優先順位は違うんですよね。



