韓国社会は依然として、育児を政府ではなく家族に頼るしかない構造である。

 子どもを抱えて働く女性の私が仕事を辞めなくてすんだのは、国の少子化支援事業のおかげでもなければ児童手当や保育支援のおかげでも、女性のための仕事・家庭の両立政策のおかげでもなく、家族の犠牲があったからだ。

 常識で考えて、女性が高学歴になって社会進出が活発になれば、働く親に代わって子どもを見るシッターなど、家事労働の外注化の規模は大きくならなければおかしい。

 しかし、韓国では公共保育サービスが脆弱な一方、他国に比べて家事労働市場の規模が小さい。その理由は、高学歴女性の労働市場への参加が低調であることと密接に関係している。男性中心の企業内部での労働は、学歴が高くない女性より高学歴女性のほうに、より高い障壁を設ける。

 高学歴中産層の主婦は、子どもを産んだら仕事を辞めて家事労働を担当する。家で子どもをケアする女性が多いから、外部に家事労働を頼むことは減る。

共働きの夫婦であっても
家事の負担は女性が負う

 植民地支配からの解放以降、韓国社会で理想とされる家族モデルは、男性が家長として家計に責任を負い、女性は家事労働を専門に担当する、男性:生計扶養者―女性:ケア労働担当者という形態だった。

 このモデルは、男性の賃金が家族全員を扶養できるレベルであって初めて実現が可能になる。だが、韓国経済が著しい成長を遂げていた時期も、男性1人で家族全員を扶養できるだけの高賃金を稼ぐというケースは多くなかった。

 実際には、女性が家事労働を専門に担当しつつ、生計の足しになる活動まで並行している家庭が多かったのだ。男性の稼ぎだけで家族全員を養い、女性は家で家事に専念するというモデルは中産層以上でこそ可能なことだった(注3)。

 共働き夫婦が一般的となった現在は、家事労働を公平に分担しなければならない。

 しかし、子どものいる家庭での子育て形態を調査分析した研究結果を見ると、女性のほうが男性より多くの家事を負担している状況は、数十年前も今も変わっていない。

(注3)ペ・ウンギョン「経済危機」と「韓国女性」、『フェミニズム研究』第9巻第2号、2009年。