どう考えても複雑

 ふつうに考えたら解けるわけがありません。
 悪魔がどのコインをどれだけひっくり返したかは明かされず、わかっているのは「6回ひっくり返した」という結果のみ。
 しかも1枚は隠されてしまいました。
 ちょっと頭をひねっても、正解への道筋なんて見えないまま。

 とはいえ、最初の状態はわかっている。
 それなら、「もし悪魔が最初にひっくり返したのが表のコインなら?」と、場合分けして考えていく?

 ……どう考えても複雑ですね。

とりあえずシミュレーション

 ただ、そうは言っても考えるしかありません。
 ためしに、実際にコインをひっくり返したときの変化を見てみましょう。
 何かしらの法則を見つけだせるかもしれません。

 まず、初期状態はこうでした。

・表の枚数:3枚
・裏の枚数:4枚

 ここから……そうですね、たとえば表のコインを1枚ひっくり返して裏にしてみましょうか。

・表の枚数:3枚→2枚
・裏の枚数:4枚→5枚

 うん。当然ですね。
 何もわからない。

 では次に……そうですね、今度は裏のコインを1枚ひっくり返して表にしてみましょうか。

表の枚数:2枚→3枚
・裏の枚数:5枚→4枚

 ……元に戻りました。
 激しく当たり前ですね。
 どうしましょう、降参してもいいですか?

見えてきた「法則」

 ラチがあきません。
 ただ、論理的思考問題である以上、考えれば答えに辿り着けるはず。
 うーん……。

・表の枚数:3枚→2枚→3枚
・裏の枚数:4枚→5枚→4枚

 ……あ!
 どのコインをひっくり返したとしても、表と裏、どちらかが1枚増え、どちらかは1枚減っていますね。
 つまり1枚ひっくり返すごとに、

 互いの「偶数」と「奇数」が入れ替わっています。

・表の枚数:3枚(奇数)→2枚(偶数)→3枚(奇数)
・裏の枚数:4枚(偶数)→5枚(奇数)→4枚(偶数)

 ……うん、ものすごく当然ですよね。
 すみません、何の成果も得られませんでした。
 引退しま……

 ……いや、待てよ?

法則から導ける答えとは

 どんなコインでも1枚ひっくり返すごとに表と裏の偶数・奇数が入れ替わるということは……。
 どのコインを選んだとしても、コインを2回ひっくり返すと表と裏の偶数・奇数は元に戻るということ。
 つまり…

 初期状態:表(奇数)・裏(偶数)
 →2回ひっくり返す:表(奇数)・裏(偶数)
 →さらに2回ひっくり返す:表(奇数)・裏(偶数)
 →さらに2回ひっくり返す:表(奇数)・裏(偶数)

 と、合計6回ひっくり返したとき、表と裏の「偶数・奇数」は最初と同じ状態に戻っているはず。

 最初の状態では、表が奇数枚で、裏が偶数枚ありました。
 そしていま、テーブルの上に見えるのは、

・表4枚(偶数)
・裏2枚(偶数)

 ですが本来は、表が奇数でないとおかしい。
 ということは、悪魔に隠された1枚は表ですね。

<正解>
 悪魔が隠しているコインは表

「思考」のまとめ

「7枚のコイン」「3枚が表」「4枚が裏」と、具体的な数字が示されているために、ついその部分に注目しがちな問題でした。でも、1枚ずつの細かい変化に気を取られるのではなく、全体として何が変化しているのか、そこに目を向けることがポイントでしたね。

 現実においても、こういうことってあると思います。さまざまな状況が予想できて頭がこんがらがってしまいそうなときは、一度「目の付けどころ」を変えてみると、新しい発想が出てきたりします。
 
思ったほどパターンが複雑ではなかったり、変わっているように見えて、変わっていなかったり。選択肢が無数に見えるときこそ、いったん思考を切り替えることを習慣にしたいですね。

・1つの点を考え続けると、思考がとらわれてしまう
・一度、視点をリセットしてみると、新しい発想が降りてくる

(本稿は、『もっと!! 頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から抜粋した内容です。書籍では同様の「読むほどに賢くなる問題」を多数紹介しています)