「自分らしい幸せ」をつかむ人が持っている3つの価値観、AIに振り回されない秘訣とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

「ウェルビーイング」は、1948年の世界保険機関(WHO)設立の際に考案された憲章で、初めて使われた言葉だ。「幸福で肉体的、精神的、社会的全てにおいて満たされた状態」をいう。新しい幸せの形として用いられ、最近さまざまな場面で耳にすることが多くなった。『ウェルビーイングの新潮流』第24回では、AIの浸透がもたらす「人の幸福」への影響を考える。

「全てが最適化された生活」は
果たして幸せ?

 今、AIは人間の生活のあらゆる領域に急速に浸透し、「便利さ」や「最適化」が価値の中心になりつつあります。そして今後、その最適化、パターン化の流れが更に加速していくのは間違いありません。

 しかし、その流れの裏側で、私たち人間が本来大切にしてきたはずのウェルビーイング、すなわち「身体・心・社会的つながりを含む総合的な幸福感」が損なわれる可能性があることは、意外なほど認識されていません。

 AIは膨大なデータを処理し、パターンを抽出し、「平均的に正しい選択」や「統計的に効率のよい行動」を提示することを得意とします。医療、都市計画、ヘルスケア、教育などさまざまな領域で、その精度の高さが今後人間の判断を支えていくでしょう。しかし、AIに任せれば任せるほど、人間のウェルビーイングが自動的に高まるかといえば、そう単純ではありません。

 なぜなら人間のウェルビーイングが「効率」や「最適化」とはまったく異なる原理で成立しているという側面があるからです。

 例えば、AIが健康データから、あなたにとって最適な1日の行動計画を提示するとします。栄養バランス、睡眠サイクル、運動量、ストレス指数。これらを総合的に分析した、あなたの身体の健康維持にとっては最適なプランです。

 しかし、このプランに従った健康な生活が、果たしてあなたにとって幸せにつながるかどうかは別問題です。むしろ人間にとって、「すべてが最適化された生活」とは、喜びや偶然性、予測不能な出会いといった「非効率さ」を奪い、それによって生きがいを感じる機会を減らす可能性があります。