新刊『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「偏差値や受験難易度だけで語られがちだった子育てに新しい視点を取り入れてほしい」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回は、推薦入試の台頭で学力は必要なくなるのか?について解説します。

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「勉強できなくても合格できる」わけではない

推薦入試に対して、教育業界の中でもまだまだ理解が進んでいない現状があります。特によく耳にするのが、「推薦入試って、勉強ができなくても合格できるんでしょ?」という誤解です。

私自身も、教育関係の会合などで「推薦入試対策をやっています」と話すと、「ああ、面接とか課外活動で受かるやつでしょ。学力いらないんだよね?」と軽く言われることがあります。

しかし、それは明確に間違いです。

最近は「推薦入試対策」を掲げる塾も増えてきましたが、その中には「be動詞がわからなくても早慶に合格!」「三角関数を知らなくても難関私大に入れる!」といった、極端な宣伝をしているところもあります。こうした誇張がSNSなどで拡散され、「推薦=学力不要」というイメージが独り歩きしてしまっているのです。

はっきり言いますが、推薦入試は、学力が不要な入試ではありません。むしろ、一定以上の学力を前提としたうえで、「それ以外の力も評価される入試」なのです。

推薦入試でも「学力」は考慮される

そもそも、推薦入試の多くでは出願資格として高校の評定平均が設定されています。評定平均とは、簡単に言えば「通知表の成績」のこと。そして、その成績を決めるのは日々の定期テストの点数、つまり学力です。

たとえば、評定平均が4.0以上ないと出願できない大学も数多く存在します。高校3年間で毎回のテストをしっかり受け、課題を提出し、授業態度を整えていなければ、そもそも推薦入試に挑戦する資格すら得られないのです。

「勉強しなくても受かる」どころか、「勉強を継続できる生徒でないとスタートラインに立てない」仕組みなのです。

さらに、学力試験を課す推薦入試も普通にあります。

たとえば東北大学の総合型選抜では、共通テストの成績や高校の評定に加えて、小論文・面接・活動報告書などを総合的に評価します。つまり、「学力+人物+経験」を総合的に見るのが総合型選抜の基本構造なのです。