スカウトは信用第一なので、いきなり店を替えることを勧めるのではなく、まずは彼女らの話を聞くところから始めるのだそうだ。

「風俗の子は、だいたいメンタルに問題抱えてるんで、相談にしても愚痴にしても、連絡の頻度が凄いですよ。『すぐ来て!』って言われたら、すぐ行かなきゃなんないし。まず、そこのケアが大変ですね。仕事してない時は、だいたい酔っぱらっているか、リスカしてたり、眠剤中毒みたいな子も多いので」

カウンセラーのように
女性に寄り添う

 まるでカウンセラーのように、スカウトたちは女性に寄り添い、まずは個人的な信頼関係を築く。そして、いま勤めている店舗の労働条件や契約内容を確認する。自分たちが組んでいる性風俗店の採用担当と話すのは、それからだ。

「今、日本中が人手不足じゃないですか。でも、性風俗は少子化以前から、ずっと人手不足なんで、よっぽど問題がないかぎり、若けりゃウェルカムです」

 というわけで、店側のOKが取れたら次の段階に進む。

書影『歌舞伎町弁護士』(若林 翔、小学館)『歌舞伎町弁護士』(若林 翔、小学館)

「女の子を口説くじゃないですけど、いろいろ親切にして仲良くなるまでは、頑張ればけっこう誰でもいけると思いますね。でもそこから先は、頭使わないとダメなんで」

 そう語るスカウト社長が特定の性風俗店と組んでいるように、新たにリクルートの対象となった女性を現在雇用している店にも、提携しているスカウト会社がある。

「で、風俗をやっている子は、お店に借金の肩代わりしてもらってたりすることもあるので、『スカウトバック』(編集部注/女性を紹介された性風俗店が、見返りとして報酬を支払うこと)のことも含めて、そのあたりは全部、シビアな数字の話し合いになります」

 すでに述べたように、適法なビジネスであるスカウト業(人材紹介業)は「性風俗産業」などの「有害な業務」の紹介だけを禁じられている。

 私が記す実態と問題は、性風俗産業が有害な仕事であるために生じているのではなく、職安法の「職業差別的な側面」によってもたらされていることを、読者の皆さんにはぜひ知ってもらいたい。