たしかに代表は、自分がスカウトした女の子たちと、しょっちゅう遊んだり、どうでもいい悩みの相談に乗ったり、なんか丁寧な感じでやってました。上前は撥ねてるかもしれないけど、昼でも夜でも付き合いはちゃんとやっていて」

 意地悪な先輩に対しても代表の一喝があり、彼はついに歌舞伎町の路上に立てるようになった。

「だけど最初の3カ月ぐらいは、給料4万とか。だから、スカウトバック10%なら、転職した彼女たちの総売上が、1カ月で40万円しかなかったということです。まあ、最初はそう思っていたんですけど、実は違ったんですね。

 半年後には、自分の売上(店からスカウト会社に支払われるマージン)が、50万(キャストの売上が500万)になったはずなのに、代表からもらった給料は25万だったんです。だけど聞けないじゃないですか。えっ、何%抜かれるんですか、とか」

 といっても、キャストを入れた各店舗から毎月集金するのは自分自身なので、総売上の金額は把握できる。

「計算してみたら、売上49万円までは5割抜かれて、売上50万から99万までは3割、売上100万以上は2割を抜かれる感じでした」

手取り100万円に到達して独立
待っていたのは凄絶な嫌がらせ

 彼は、裸一貫でスカウトを始めてから、わずか3年で手取り100万円に到達した。その秘密は路上ではなく、人間関係にあった。

「結局、ホストと組むことにしたんです。彼らがカモりまくって、売掛けでどうしようもなくなったお客さんたち、というか、そのお客さんたちのほとんどは性風俗店の現役キャストなので。それをどんどん紹介してもらって、儲かりましたねぇ」

 だが、悪銭は身に付かないものらしい。4年目にして独立話を切り出した彼に、代表とケツ持ち(編集部注/用心棒として、トラブルを解決したり面倒を見たりすること)は厳しかった。

「手切れ金は、キャッシュで1000万円とホスト人脈の全部です。怖い人の中でも、特に偉い人の系列の人が出てきたので、どうしようもないです」

 大金を支払い、人脈も渡し、ようやく独立を果たした彼を、今度はピンポンダッシュが襲った。寝ている時も、明け方も、夜中も、インターフォンが連打される。眠気に目をこすりつつ玄関を出たら、なぜか大量の糞。人のものか、犬のものかもわからない。吐瀉物の時もあった。

「あの酸っぱい臭いは、人間のゲロに間違いないと思いましたね」