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寝不足で働き続けるショートスリーパーと、たっぷり睡眠をとるロングスリーパー。この違いは、人間だけでなくアリの社会にも存在していた。人間そっくりに寝て、そして子育てをするアリたちの生態を通して、「正しい睡眠のあり方」を探る。※本稿は、岡山理科大学理学部動物学科教授の村上貴弘『アリ先生、おしゃべりなアリの世界をのぞく』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。
なかなかお目にかかれない
アリのかわいい寝姿
アリが寝ているところを見たことがあるだろうか?
アリももちろん寝る。脳波を測定できるわけではないので、人間の「睡眠」とは厳密には違うかもしれないが、確かに寝ている。
ほとんどのアリは土や朽木の中の巣で休む。ノマディック(放浪性)のグンタイアリですら、夕方6時くらいにはビバークポイントの木の洞などに集まって集団で寝る。
そうしたアリの姿を見ること自体稀だし、アリを飼育していてもなかなか寝ているところまで観察できない。アリの寝姿、これが、じつにかわいい。
起きている間は頻繁に動かしている触角は折りたたまれ、6本の脚も体に密着するような状態になり、頭をやや下げ気味にしてフリーズする。日頃のセカセカとした行動から一変して、巣の中でじっと動かない姿は愛らしい。
冬眠など、深く眠っているときは、ほとんど死んでいるようで見ているこちらが心配になる。
アリが睡眠をとる時間やリズムは、種によってさまざまだ。日本でもっともよく見られるクロヤマアリは昼行性で、日中働き、夜5~6時間ほど眠る。
僕が卒業論文で取り上げたヤマヨツボシオオアリは夜行性なので、夜8時くらいから活発に活動しはじめ、朝10時くらいまで動き、そこから5~6時間ほど眠る。







