また、ハキリアリは基本的に24時間働いていて、15分おきに2~3分ほど寝るだけ。カドフシアリは一日中、まったりまどろんでいて、明確な周期性はない。
ショートスリーパーのアリは
わずか3カ月で過労死した
興味深いのは、こうした睡眠時間(労働時間)は、社会の複雑さや寿命と無関係ではないことだ。
超短時間睡眠のハキリアリは、アリ全体の中で見てももっとも大きく複雑な社会を構築している。大きなコロニーになると個体数は数百万。働きアリは生まれもって決まった役割が割り振られている。
外で葉っぱを切るもの、巣に運ぶもの、小さくちぎるもの、菌糸を植え付けるもの、収穫したキノコを女王アリや幼虫に与えるものなどなど。
1個体1個体は15分おきに休んでいて、夜は多少、活性は落ちるものの、コロニー全体が眠ることはない。
そんなハキリアリの働きアリの寿命は驚くほど短く、わずか3カ月。寿命を削って働き、過重労働の末の過労死、そんなふうに思えなくもない。
一方、最大でも1万6000個体ほどのコロニーで、そこそこな社会を作るクロヤマアリの働きアリの寿命は2~3年。1コロニー50個体ほどのこぢんまりとした社会を作り、一日中まどろんでいるカドフシアリは5~6年生きる(飼育下では7年生きた働きアリもいた)。
労働(睡眠)と寿命の相関については、キノコアリグループ内でも顕著だ。
祖先的な形質を残す、社会が小さいキノコアリは労働時間が短く、まったく働かないアリの割合は3割程度。その寿命は5年ほどとかなり長寿。
それと比べると、超巨大社会を作るハキリアリはなんと生き急いでいるのだろうか。
長く寝るほど寿命は長い。睡眠時間が短い=労働時間が長いほど、アリは短命となる。「働きすぎ」「寝ないで働く」のは、体にストレスを与え、寿命に直結する。身につまされる人も多いのではないだろうか?
ただ一方で、こうとも言える。(寿命は短くなるけど)いっぱい働くほど、社会は大きくなる。どちらがいい、という話でもない。本来進化に選り好みはできない。その場に合わせて長い時間をかけて適応した結果なのだ。







