役目が終わったら
堂々と離れればいい
つながりを育むために大切な心構えを紹介してきた。最後の注意点として、定住しないことを後ろめたく思わないでほしい、という前提を共有したい。
その理由が、よそ者効果だ。関係人口に代表されるよそ者は、定住しなくても地域にもたらす効果がある。定住しない後ろめたさを理由に、つながった地域や生まれ育った地域から遠ざかってしまうケースも見てきた。それはお互いにとって残念だろう。
さらに、誤解を恐れず言えば、去ることも恐れないでほしいと考えている。
『関係人口の時代「観光以上、定住未満」で地域とつながる』(田中輝美、中央公論新社)
それは、社会関係資本の考え方とつながっている。社会関係資本は、個人の財産であると同時に、公共財でもある。パットナム(編集部注/ロバート・パットナム。政治学者)は、「つながりに乏しい個人であっても、つながりに富む社会に住んでいる場合はそこからあふれ出た利益を得ることができる」と説明している。
人的資本はその個人が地域から去れば連動する。しかし、社会関係資本はコミュニティ内に蓄積されているのだ。
企業の人材流動やイノベーション論でも同様の議論がある。
『なぜ中国企業は人材の流出をプラスに変えられるのか』の著者・中村圭は、日本企業は挑戦や貢献ができる人材を組織の内部に囲い込んで育成しようとしがちだと言う。
それに対し、中国企業は、人材の流動性が高く、流出入によって、新たな人材を得ることで知識やその人の持つつながりを手に入れ、その人材が去った後も、組織の資源として残ると紹介している。
個人のつながりが良好なら、流動すればするほど新しい知識や情報、つながりが生まれ、化学反応やイノベーションが起きるのだ。







