卵焼き、茶碗蒸し、オムレツなど調理法のレパートリーも多いので、料理の材料として万能で欠かせない存在です。

 一方で、卵の黄身にはコレステロールが多く含まれていることから、食べすぎると脂質異常症(高脂血症)や心臓・血管の病気を増やす可能性が指摘されています。とくに、卵を多く摂取する人では、血液中のLDLコレステロール(コレステロールの一種で、増えすぎると動脈硬化の原因となるため「悪玉コレステロール」とも呼ばれている)が高くなることが報告されています。

 コレステロールは、体に必要な栄養素である一方、がん細胞の増殖を促進することが報告されています。では、実際に卵の摂取とがんリスクには関係があるのでしょうか?

 2021年にPLOS Medicineという雑誌に報告された論文によると、52万人以上のアメリカ人を対象として食事のくわしい調査を行い、その後中央値16年の期間中での、がんを含めた病気による死亡リスクについて解析しました。

 その結果、卵(全卵)の摂取量の増加は、すべての死因、心血管疾患、そして、がんによる死亡リスクの上昇と有意に相関していました

 具体的には、1日に卵半分の摂取が増えるごとに、がん死亡リスクが7%上昇していたとのことです。一方で、この卵を、他のタンパク源である鶏肉、魚、あるいは、乳製品などに置き換えた場合には、がんも含めて死亡リスクが減っていました。

卵を1日2個以上食べると
がん死亡リスクが3.2倍に

 次に、過去の世界中の研究をまとめた解析結果も紹介します。

 2022年に、Advances in Nutrition という雑誌に報告された論文で、過去に報告された卵と死亡リスクについての33件の集団研究(対象者が220万人以上)をまとめて総合的に解析した、メタ解析という研究が行われました。

 その結果、卵を最も多く摂取するグループでは、最も少ないグループに比べて、すべての死因による死亡リスク、心血管疾患、心臓病、脳卒中、呼吸器疾患による死亡リスクに有意な差はありませんでした。