たとえば、マウスに骨肉腫の細胞を移植した実験モデルにカプサイシンを投与すると、腫瘍の成長が抑えられることが示されました。またカプサイシンには、免疫系を活性化する作用も認められています。

 では、唐辛子によって、がんのリスクはどのくらい減るのでしょうか?

 2021年にAnnals of Medicine and Surgeryという雑誌に報告された論文によると、およそ57万人を対象として、チリペッパーを食べる人(26万人)と食べない人(あるいは、めったに食べない人)(31万人)について、がん、心血管疾患などによる死亡リスクを比較しました。

 その結果、チリペッパーを摂取する人は、摂取しない人に比べて、がんによる死亡リスクが23%低下していました。つまり、チリペッパーを食べることで、がんによる死亡リスクを2割以上も下げることができるという結果です。また、すべての死因による死亡リスクも25%低下していました。

 というわけで、唐辛子に含まれるカプサイシンという成分は、がんを抑制し、がんの死亡リスクを低下させる可能性があるということが示されました。

 ただし、唐辛子など辛い物を大量に摂取すると、粘膜が傷つきやすくなって、胃や腸の粘膜が荒れたり、下痢をしたりする可能性もありますので、食べすぎには注意しましょう。