“熱意ある社員”はわずか…
日本が世界平均より大きく下回る理由
エンゲージメントという概念は、当初は、人がある役割に没入している状態として定義された。それが、人が仕事に没入している状態として使われるようになっていった(注4)。
学術的に仕事への没入は、ワーク・エンゲージメントという概念として定義されている。ワーク・エンゲージメントとは仕事に関連するポジティブで充実した心理状態だとされている(注5)。
従業員エンゲージメントが日本で広く知られるようになったのは、ギャラップ社の国際比較調査によるものだ。
2017年に日本経済新聞がギャラップ社の国際比較調査の結果を論じた。その記事は、熱意ある社員(仕事にエンゲージしている社員)の比率が米国32%に対し、日本は6%であり、国際比較としては139カ国中132位だったと報じたのである(注6)。
この結果は、米国に比べて日本企業の社員のエンゲージメントはこれほど低いのか、と衝撃を持って受け止められた。
最近のギャラップ社の調査で、世界との差がさらに拡大していることを、再び日本経済新聞が報じた。ギャラップ社の2022年の調査(2023年発表)によれば、熱意ある社員の比率の世界平均は23%だが、日本は5%で、調査した145カ国の中、イタリアと並んで最下位だったのである。
この記事の中で、ギャラップ社のジョン・クリフトン最高経営責任者(CEO)は、日本企業は社員との対話(特に管理職とそのチームメンバーの)が足りず、1人ひとりの強みを活かせていないと指摘している(注7)。
同書より転載 拡大画像表示
(注4)Kahn, W. A.(1990). Psychological Conditions of Personal Engagement and Disengagement at Work, Academy of Management Journal, 33(4), pp.692-724.
(注5)島津明人(2014)『ワーク・エンゲイジメント――ポジティブ・メンタルヘルスで活力ある毎日を』労働調査会
(注6)日本経済新聞2017年5月26日朝刊
(注7)日本経済新聞2023年6月15日朝刊







