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「ワーク・エンゲージメント」という言葉をご存知だろうか。「人が仕事に没入している状態」を表す言葉だが、日本企業で働く社員のエンゲージメントは世界145カ国中最下位という調査結果がある。なぜ日本では社員が”熱意を持って”働けないのか。日本企業特有の組織文化をみながら考察する。※本稿は、法政大学教授の石山恒貴『人が集まる企業は何が違うのか 人口減少時代に壊す「空気の仕組み」』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。
ベンチャー企業も逃れられない?
日本の保守的な企業風土
ネットスラング(SNSなどのインターネット上の俗語)にJTCという言葉がある。
ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニーの略であり、伝統的な日本企業の保守的な組織文化を皮肉るスラングである。ネットスラングであったはずが、最近では一般のメディアでも取り上げられるようになり、上意下達で硬直的な企業文化を批判する際に使われている(注1)。
JTCは伝統的な日本企業を意味するので、三位一体の地位規範信仰(無限定性・標準労働者・マッチョイズム)(編集部注/無限定性=職種、勤務地、時間を会社命令で決められること。標準労働者=新卒入社した企業に長期雇用されている労働者。マッチョイズム=行き過ぎた仕事至上主義。これら3つの価値観が、一体となって固定化された社会意識のこと)が典型的に存在すると考えて差し支えないだろう。
他方、スタートアップ企業、ベンチャー企業と呼ばれる新興企業は、一般的にはJTCと対照的な組織文化を有すると位置づけられている。そのため、三位一体の地位規範信仰は新興企業には当てはまらないとみなされているのではないだろうか。
しかし濱口桂一郎(編集部注/労働研究者。元厚生労働省の官僚で研修機構労働政策研究所長)は、新興企業においても、長期的な雇用保障は存在しないものの、正社員を会社のメンバーとみなす組織文化は存在し、それが強い個人の称賛と行き過ぎた仕事至上主義につながると指摘する(注2)。
(注1)日本経済新聞2024年1月30日(2025年1月13日アクセス)







