エンゲージメントが低いのに
ストレスは高い日本の労働環境

 もう少し、この調査結果を詳しくみてみよう。熱意ある社員の比率は日本5%、米国34%、インド33%、スウェーデン21%、中国18%、ドイツ16%、韓国12%、英国10%、フランス7%、イタリア5%であった。

 この調査でギャラップ社は、日常でストレスを感じている社員の比率も示している。それによれば、日常でストレスを感じている社員の比率は、日本42%、中国55%、米国53%、韓国40%、インド32%、英国19%、ドイツ17%、フランス17%、スウェーデン14%、イタリア11%であった。

図表13:米国ギャラップ社2023年の「日常のストレス」国際比較同書より転載 拡大画像表示

 つまり、米国ではエンゲージメントは高いが、ストレスも高い。フランスとイタリアでは、エンゲージメントは低いが、その代わりストレスも低い。日本ではエンゲージメントが低く、そのうえストレスも高いのである(注8)。

 日本では社員の主体性が強みとされてきたが、本当に主体性が高いならエンゲージメントも高くなるはずだ。またエンゲージメントは人的資本の開示項目として注目されており、企業の取り組みとしてその向上の優先順位は高かった。

 にもかかわらず、エンゲージメントは世界最低水準のままであり、ストレスも高い。これは日本企業の文化に構造的な問題があることを示唆しているだろう。

 その構造的な問題とは、日本企業型パターナリズムによって企業文化が上意下達で硬直的なものになっていることだと考える。

 なぜなら日本企業の社員の主体性には、日本企業型パターナリズムによってもたらされる「強制された主体性」という側面があるからだ。

(注8)GALLUP(2023) State of the Global Workplace 2023 Report THE VOICE OF THE WORLD'S EMPLOYEES