個人の業績や能力より
飲み会への参加が大事?
日本的雇用を肯定的に捉える論調に疑問を呈する論者の代表が、経済学者の熊沢誠である。
三位一体の地位規範はオールド・ボーイズ・ネットワーク(編集部注/男性中心の組織で培われてきた独特の文化や仕事の進め方、人間関係)のような非公式なネットワークの強さにつながる。
それは個人にとっては無限定に自分の時間を差し出し、飲み会なども頻繁に参加することを意味する。
こうした所属企業で長期間働く人々との関係に心を砕く状況を、熊沢は「強制された主体性」であると指摘する。それは「日本的経営の陰」でもある(注9)。
『人が集まる企業は何が違うのか 人口減少時代に壊す「空気の仕組み」』(石山恒貴、光文社)
熊沢の分析によると、三位一体の地位規範における働き方は次のように整理できるだろう。
そこではチームワークが重視され、職務範囲が曖昧である。個人の業績や能力よりも、組織への忠誠心が重視される。そこで日本企業の人事評価では、業績や能力よりも、「情意考課」と呼ばれる、姿勢、態度、協調性に重きがおかれる。
つまり個人の頑張りは評価されにくく(むしろ出る杭になるリスクを生む)、それが日本のホワイトカラーの生産性の低さにつながっている(注10)。
長期間、職場での忠誠心や協調性を気にしながら働く三位一体の地位規範における働き方は、たしかに自発的というよりも強制されているようにみえる。
(注9)熊沢誠(1989)『日本的経営の明暗』筑摩書房
(注10)熊沢誠(1997)『能力主義と企業社会』岩波書店、p.161.







