ダントツの非正規組織率を誇る
UAゼンセンの革新的な取り組み
UAゼンセンは産業別の労働組合であり、流通・サービス業などの業界約2200の労働組合が加盟している。UAゼンセンにおける非正規雇用者の組合員の比率は、なんと6割を超えている。これは他の産業別労働組合には存在しない特徴である。
UAゼンセンの主力業界である小売業や飲食業では、非正規雇用者の基幹労働力化が進み、業務の中核を担当するようになっている。2024年からの新会長の出身母体であるイオンでも非正規雇用者の基幹労働力化は進んでいる。
UAゼンセンでは労使交渉の範囲を、ジェンダー平等、育児・介護、リスキリング、カスタマーハラスメントなどに拡大している。こうした拡大は非正規雇用者の悩みを包摂したものになっている。
UAゼンセンは発足以来50万人も組合員数を増やし、その合計人数は189万4000人(2024年9月時点)。国内最大の産業別労働組合であり、他の主要産業別労働組合の7割が組合員数を減らす中、1人勝ちの状態であるとされる(注9)。
2023年の労働組合員の推定組織率は16.3%であり、長期低落傾向が続いている(注10)。日本全体で労働組合員数が減少する中、UAゼンセンは例外的な存在だろう。
『人が集まる企業は何が違うのか 人口減少時代に壊す「空気の仕組み」』(石山恒貴、光文社)
それはやはり業種の特徴が大きい。
小売業や飲食業で非正規雇用者の基幹労働力化が進み、職場の中核として正社員と同様に非定型で複雑な業務を担当するようになると、労働組合のみならず、企業の人事施策としても正社員と非正規雇用者の均等な取り扱いが進展していく。これは無限定/限定の中立化推進(編集部注/三位一体の地位にある者とない者の連帯)の重要なヒントになる。
しかし、多くの労働組合では非正規雇用者を包摂できず、日本全体で組合員数の減少が継続している。労働組合の構成員が正社員に限定されるなら、三位一体の地位にある者の処遇向上が主な労使交渉のテーマになるだろう。その場合、三位一体の地位規範は強化され続けるだろう。
(注9)日本経済新聞2024年9月18日朝刊
(注10)前掲 厚生労働省「令和5年労働組合基礎調査の概況」







