くわえて正社員と非正規雇用者の処遇を同時に組合が要求すると、経営側から、処遇の向上に充当する原資を正社員と非正規雇用者の間でバランス化させたいという提案があるかもしれない。この場合、正社員と非正規雇用者の間の利害調整でもめてしまうことは想像に難くない。

 さらに雇用保障についても利害が対立する。

解雇の局面でもあらわになる
正社員と非正規社員の分断

 企業が経営の悪化などを理由として集団的な解雇を行うことは整理解雇と呼ばれる。このような場合、日本では裁判例として整理解雇の4要件を満たさなければ、解雇無効と判断される可能性が大きいとされている。

 4要件の中には、解雇回避の努力と解雇者の選定の合理性という要件がある。企業としては解雇回避のためにあらゆる努力を尽くさなければならず、また誰を解雇するかという選定を合理的に行わなければならない。

 この場合、正社員の雇用の維持が非正規雇用者より優先され、正社員の解雇を避けるために先に非正規雇用者を解雇の対象として選定することは一定の合理性があるとされる。

 さらに4要件の中には解雇手続きの妥当性というものがあり、企業は労働組合など労働者を代表する者と丁寧に話し合う必要がある。

 そうなると労働組合として、企業としての話し合いの中で、正社員の雇用を維持するため、先に非正規雇用者を解雇の対象として選定してほしい、という提案をする局面があるかもしれない。このような状況は労働組合内部で、正社員と非正規雇用者の分断をもたらすだろう。

 このように三位一体の地位規範には、構造的に労働組合の非正規雇用者の包摂を難しくする側面がある。

 しかし、非正規雇用者をなかなか包摂できない他の労働組合とは一線を画している組合がある。それはUAゼンセン(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)である。